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「カウント3-0からの満塁本塁打」は今シーズン2人目。こちらは「暗黙のルール」を破っていないが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ドミニク・スミス(ニューヨーク・メッツ)Sep 11, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月11日、ドミニク・スミス(ニューヨーク・メッツ)は、カウント3-0からの4球目をスウィングし、グランドスラム(満塁本塁打)を記録した。このカウントからの満塁本塁打は、8月17日のフェルナンド・タティースJr.(サンディエゴ・パドレス)に続き、今シーズン2人目だ。

 スミスの場合、大量リードの試合終盤ではなかったため、「暗黙のルール」を破った、「暗黙のルール」は時代遅れ、といった論議は起きていない。タティースJr.は7点リードの8回表、スミスは4点リードの4回表に打った。

 ただ、カウント3-0からの満塁本塁打は、そうあるものではない。調べたところ、2010年代は4本しか見つからなかった。2010年6月26日の松井秀喜、2013年5月22日のエバン・ギャティス、2013年7月2日のアレックス・ゴードン(カンザスシティ・ロイヤルズ)、2014年5月9日のアレクシー・ラミレスだ。見落としがなければ、2015~19年は0本なので、タティースJr.が打つまでには、5シーズンのブランクが存在する。一方、タティースJr.とスミスは、1ヵ月と離れていない。ちなみに、タティースJr.はメジャーリーグ2年目の21歳、スミスは4年目の25歳。どちらも、満塁本塁打はキャリア初。ソロ、2ラン、3ランを合わせた通算本塁打としては、どちらも33本目だった。

筆者作成
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 MLB.comのアンドルー・サイモンによると、カウント3-0からのスウィング率は、2008年の7.1%に対し、2019年は11.1%。多少の上下はあるものの、基本的には右肩上がりの傾向にあるという。カウント3-0からのホームランは、今後も増えていきそうな気配だ。そうなれば、このカウントからの満塁本塁打も増えるだろう。タティースJr.を擁護する声――「暗黙のルール」に対して批判的な意見――が多いことも、「追い風」となるはずだ。

 なお、カウント3-0からの満塁本塁打は、日本プロ野球でも少ない。10年前に松井の一打を報じた日刊スポーツには「カウント0-3からの満塁本塁打は珍しく、日本のプロ野球では通算2050本の満塁弾のうち、92年マルチネス(オリックス)06年ズレータ(ソフトバンク)の2本だけで、日本人選手の例はない。」という記述がある。当時、日本におけるカウントの表記は、ストライクが先でボールが後ろだった。打った2人は、カルメロ・マルティネスフリオ・ズレータだ。その後、2014年10月6日に山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)が記録し、2015年5月23日には西川遥輝(北海道日本ハムファイターズ)も続いたが、あとは……誰がいただろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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