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「小1の壁 」習い事・送迎付き民間学童保育の実態は

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
民間の学童では英語やプログラミングのクラスが人気だ(ペイレスイメージズ/アフロ)

子どもが小学校に入ると、働く親は子どもの居場所に悩みます。保育園と違って小学校は早い時間に終わってしまい、放課後を過ごす「学童保育」は待機者が多く入れない所も。こうした「小1の壁」に対して民間企業がビジネスとして運営する学童保育が増えています。送迎や習い事付きの充実したサービスですが課題もあり、運営体制は事前に見極める必要があります。現場を取材しました。

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公設の学童保育より遅くまで預かり可能で、オプションのプログラムや夕食も頼める「民間学童」は、学校や習い事への送迎もあり、働く親のニーズに応えたサービスが用意されています。利用料は高めですが、特に公設の学童保育が足りない都市部で人気で、経営側もビジネスチャンスとして拡大しています。

●入ってすぐにトラブル発生

届け出などが必要ない民間学童は、入ってみて気になる点も多いです。娘が小学校に入学する時、民間学童選びに失敗しました。ある民間学童が夜10時までやっていて学校からも近く、ワンオペ育児の経験がある筆者はわらにもすがる思いで入会しました。公立学童は1年生が優先で入れて普段はそちらに行っていますが、親が仕事で夜遅い日もあります。娘もずっと遊んでいる公立学童だけでは物足りないと、簡単なプリント学習のある民間学童を楽しみにしていました。2年生以降、公立学童に入れなかった場合のセーフティネットでもありました。

ところが利用を始めてすぐトラブルが。事前に民間学童から「こういう人が迎えに来る」というメモや写真が送られてきたので、しっかりしているなあと思いました。でも夜になって娘に聞くと、迎えが来なかったので自分で学校から民間学童に行ったそう。本人は冒険気分で誇らしげでしたが、1人歩きの注意をしていなかったため驚きました。他の保護者に聞いても「車の出入りがあるし心配」という意見でした。高齢初産の筆者は、ナーバスになってしまいました。

この民間学童の責任者に電話すると、意外にも逆切れされました。「規約に書いてある、説明会で何度も説明した、迎えは遅れる場合もある」との話で、保護者を不安にさせたことに対して反応がなくクレーマー扱いされました。教室に迎えに行った際、気になる点はありました。子どもたちが走り回り、声をかけてもよく把握していない先生かぶっきらぼうなスタッフしかいません。

●ビジネスチャンスで拡大

冷静に考えると民間学童は届け出は必要なく、預かり付きの習い事のようなもの。個人経営も少なくありません。そこは信頼する家庭が数年前に利用していたので、比較検討もせず入ってしまい反省しました。後で聞いたら、体制が変わってやめる家庭が続出したそうです。

ビジネスチャンスとして民間学童が増え、急に拡大するとスタッフが足りなくなり運営にほころびが出るパターンが想像できました。ギリギリの運営では、いきなり閉鎖になりかねません。ミスがあっても対応できないぐらい余裕のない場は利用できないと思い、1か月たたないうちに退会手続きをしました。

それから1年生の4月という中途半端な時期に、他の民間学童の見学を始めました。友達が行っている民間学童を聞き、ネットで調べて説明会や見学会を予約。近年、様々なタイプの民間学童ができたのを初めて知りました。

●難しいプログラミングも

筆者は失敗を踏まえ、客観的に観察しました。最初に親子で見学したのは、英語とプログラミングが売りの民間学童。友達が公立学童と併用していて「始まったばかりだから経営者も一生懸命で、融通がきいていい」と勧められたからです。

その家庭は「夜遅くまで預けられる民間学童が必要」なわけではないそう。子どもは毎日、放課後に公立学童へ行く。夕方、民間学童からそこに迎えの車が来てプログラムに参加、夜7時ごろに学校近くまで車で送られてくるのを親が迎える。何か刺激を与えたいという理由で行かせているようです。

見学に行くと、アメリカンな内装にノリノリの音楽が流れ、社長からカラーコピーした英語の教科書を見せられました。プログラミングは娘が以前に幼児教室で体験した簡単なものとは違って、専門の先生がついた本格的なものでした。

社長に何気なく聞いてみると、近くの人口が増えているエリアにもう1軒出すといいます。ビジネスなんだなあと頭がクラクラしました。費用は週5で行くとざっくり月に10万円ぐらい。「体力のある子向けだね」という感想で、我が家は撤退しました。

●昭和な親は英語より国語・算数

次に娘と訪ねたのはオールイングリッシュの民間学童。公立学童と併用している友達が多く、見学してみました。やはり学校から車送迎があり落ちついた公園のそば。先生は正職員が中心で、外国人の先生は帰国したり転職したり定着しないケースが多いけれど、その点は安心。送迎車はドライバープラス、もう1人スタッフがいる。各地に支店があり、運営母体も大きいようです。

ただ初めての学校生活に疲れている1年生が、車で来てノージャパニーズの放課後はトゥーマッチ。 2020年に英語は小学校で必修化されるというし、公立小学校でも1年生から英語の授業があって、ネイティブの先生に教わってきます。娘も楽しそうに先生の真似をしますし、時代が変わったのはわかりますが、オールイングリッシュは早すぎる気がしました。昭和育ちの中年からすると、1年生は遊び感覚としてもまず国語・算数をやってほしいのです。

しばらくして、ここを利用する家庭に聞いてみました。実は行っている友達のうち何人かはやめたがっていて、この学童に行く日は泣いているそう。「親自身の、英語をどうしてもやらせたいという強い思いがなければ続かない」と言われ、それはそうだと納得。若い世代の親は、仕事をする上で英語の重要性を考え、子どものためという信念を持っているのでしょう。

●ワガママに答えてくれる経営者

それから、自主学習で国語・算数もできる新しい民間学童を見つけ、説明会に親子で参加してみました。ここも送迎付きで英語やプログラミングがあります。平日夜の説明会に、近隣の働く親がたくさん来ていました。ほとんどの子は、翌年の4月に1年生になります。1年前から熱心に質問をしていました。

筆者は経営者に「最初の民間学童で失敗し、慎重になっている」と話しました。すると様子見のために、本来は週2日からの設定のところ1日でもいいとのこと。さっそく見積書や規約等が送られてきても、決めかねていました。学校から車で行くことや運営体制が気になりました。どこも親たちの要望に応えようと様々な工夫をしていますが、「帯に短し、たすきに長し」なのです。

●リスク分散目的、立地が決め手

最後に、学区内にある民間学童の説明会へ。その学童は「校舎が狭くて、子どもがかわいそうでやめた」と知り合いのお姉ちゃんのケースで聞いていて、選択肢にはなかったのです。取材の参考になればと説明会に行ってみたら、新しい校舎を増やしたばかりでスペースがあります。他の民間学童より創設が早く、組織は小さくないようでした。

1年生時は公立学童に入れていて、リスク分散の目的で利用するには、遅くまで預かり可能で利用料も抑えめ。学校にスタッフが徒歩で迎えに来る距離で、保護者の目が届く立地です。

●細かいトラブルはあるけれど

迷いながらも週1日の利用で入会しました。対外交渉は妻任せの夫にも、校舎を見せました。入ったら入ったで、細かいトラブルは起きます。そのたび話し合いをして、娘の居場所の一つになっているので、「このライン以上は求めない」と割り切っています。

親のニーズは様々です。身内に頼れない、公設学童に入れない家庭が安心のために利用する場合もあり、民間学童が贅沢だとは言い切れません。でも民間学童を選ぶ際には、充実のプログラムや送迎サービスだけでなく、運営の体制や何が目的かをしっかり確認して決めるのが大事だと思います。何より本人が本当に行きたいのか、放課後にハードな刺激が必要なのか、子どもの気持ちを尊重しなければなりませんね。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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