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ソフトバンク158キロ左腕が2年8か月ぶりの復帰登板!「スピードはまだ出せる」

田尻耕太郎スポーツライター
ソフトバンクの川原。写真は今春キャンプ時に撮影

5年前の一軍デビュー戦より緊張

「全身が震えてました」

万感の思いが溢れ出しそうになるのを、必死にこらえ、福岡ソフトバンクホークスの川原弘之はマウンドに立った。

2年8か月ぶりに“最速左腕”が帰ってきた。6月10日、タマホームスタジアム筑後で行われた東北楽天ゴールデンイーグルスとの練習試合で復帰登板を果たした。予定の1イニングで打者5人に投げて、走者は許したもののヒットは打たせず無失点に抑えた。この日の最速は147キロをマークしてみせた。

「足の先から手の先まで震えました。ロジンを手に取るのも苦労するくらい。5年前に(一軍デビュー戦で)東京ドームで投げたときは、ブルペンでは緊張したけどマウンドでは大丈夫だった。今回はマウンドに上がっても震えが止まりませんでした」

参考ながら日本人最速

剛速球左腕として入団時から注目を集め、一軍デビューを果たしたその年の2軍戦で最速158キロをマークした。一軍戦では昨年、埼玉西武ライオンズの菊池雄星が157キロをマークして“日本人左腕最速”と言われているが、川原は参考記録ながらそれを上回っているわけだ。

‘15年春に左肩手術、その秋に左肘の『トミー・ジョン手術』を受けた。その後も復帰を目前にしながら、何度も左肩に異変を再発させてどんどん遅れていたのだった。

「去年の秋はショックが大きかった。それまでの2年間よりも、この8か月間はしんどかったです。とにかく何か目標があるわけでもなく、一日一日を一生懸命やるだけという思いで過ごしていました。でも、ようやく投げられた。次も無事に投げきることが前提になりますが、これからは内容もこだわっていきたい」

無事に終えた復帰マウンドを経て、川原の表情はより明るさを取り戻している。

復帰2戦目は明日14日先発

“最速左腕”の能力は誰もが認めるところ。工藤公康監督がまだホークスの監督に就任する前の評論家時代に、宮崎キャンプを取材で訪れた際に川原に大注目。ブルペンで投げれば王貞治球団会長、秋山幸二監督(当時)、工藤・現監督が並んで熱視線を送る光景も見られた。

今春のキャンプでもかつての沢村賞投手・斉藤和巳氏がべた褒め。「真っ直ぐだけ、ど真ん中に投げ続けても十分に勝負できる。それくらいすごい球を投げられる」と太鼓判を押していた。

「スピードは投げていけば自然に上がっていくと思います。普通に投げていけば、150キロも出せると思います。とにかく変に力んで肩が痛くなったら元も子もないので、普通に投げることを意識しながらやっていきたいです」

次回登板は14日の楽天との練習試合(タマスタ筑後)で先発だ。「先発といっても1イニングですけどね(笑)」。

左肘の手術後に育成枠に降格。現在も背番号は「122」だ。見据えるのは今季中の支配下登録復帰である。「評価する人がしてくれると思って、自分は出来ることをやっていきたい」。もう後戻りはしたくない。前へ、これからは前へ。川原の止まっていた時間が動き出した。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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