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今シーズン、大谷の「リアル二刀流」は多くて4試合!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)JANUARY 5, 2018(写真:ロイター/アフロ)

 大谷翔平が入団したロサンゼルス・エンジェルスは、DH制のあるアメリカン・リーグに属している。今シーズン、大谷は先発投手あるいはDHとして起用される可能性が高そうだ。

 先発登板した試合で打席にも立つ、大谷の「リアル二刀流」が実現するのは、エンジェルスが遠征してナショナル・リーグの球団と対戦する試合に限られるかもしれない。インターリーグの場合、ア・リーグの球団のホームゲームはDH制があるが、ナ・リーグの球団のホームゲームはDH制がない。

 もっとも、ア・リーグの球団同士が対戦する試合や、ア・リーグの球団のホームで行われるインターリーグでも、DHは必須ではない。DHを使わず、投手と守備につく野手の計9人に打たせることもできる。2016年6月30日には、ア・リーグに属するオークランド・アスレティックスのホームゲームにもかかわらず、サンフランシスコ・ジャイアンツはマディソン・バムガーナーを「9番・投手」に据えた。

 ただ、これは極めて稀なケースだ。その前のDH放棄は、シカゴ・ホワイトソックスのケン・ブレットが「9番・投手」と「8番・投手」で出場した、1976年の2試合まで遡る(ホワイトソックスはア・リーグ所属。当時インターリーグはなかった)。他にもDH放棄は起きているが、「相手はDHを使っているのにこちらは投手が4番。7年前にはマッドン監督もア・リーグの試合で投手を3番に」で紹介したように、最初から意図したわけではなかった。

 アクシデントを除くと、通常はDHと役割を分担するア・リーグの先発投手が打席に立つケースは、ブレットを最後に40年以上も途絶えている。バムガーナーはDH制のない試合に登板することがほとんどなので、打席に立つこと自体は珍しくない。そのバムガーナーにしても、DH制がありながら使わなかったのは1試合だけだ。昨シーズンはア・リーグの球団のホームゲームで2度登板したが、いずれも打席には、バムガーナーではなくDHが立った。

 エンジェルスのマイク・ソーシア監督は、大谷登板時のDH放棄を否定はしていないものの、実行には疑問が残る。少なくとも、大谷がDH出場時に好成績を残すか、複数の野手が同時に故障者リスト入りするなどの条件が必要と思われる。

 今シーズン、エンジェルスがナ・リーグの球団のホームを訪れるのは、5月8日~9日のコロラド・ロッキーズ戦、7月13日~15日のロサンゼルス・ドジャース戦、8月13日~15日のサンディエゴ・パドレス戦、8月21日~22日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦だ。大谷がこれらのカードすべてに先発登板しても、その他の試合でDH放棄がない限り、「リアル二刀流」は4試合にとどまる。

 なお、ブレットはDH放棄の2試合とも、3打数0安打に終わった。どちらも、完投しながら完封負けを喫した。一方、バムガーナーは4打数1安打。3回表に先頭打者として放った二塁打は打者一巡の猛攻を呼び、投げては7回途中まで4失点で、白星を手にした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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