【君たちはどう生きるか】ナゾの鳥はあなたの人生観へ向けた強烈なメッセージ?私達の日常に当てはめて解釈
はじめに。この記事はスタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」の、重大なネタバレや、核心について言及しています。
これから“初めて”観る予定のある方はスクロールせず、WEBページを移動して頂けましたら幸いです。
逆に、どのような解釈があるか知りたい。またご自身で考えたものの、よく分からず、モヤモヤをスッキリさせたい方へ向けた、内容となっています。
「ひとつストンと、胸に落ちた」。もし、その様に感じて頂けましたら、幸いです。
宮崎駿監督が私たちに伝えたいこと
映画を中盤くらいまで観て行くと、アオサギ男とはいったい何者なのか?
まだ、ぼんやりしているとともに、多くの方はこんな風にも、思ったのではないでしょうか。
「え、なんでコイツが主人公のパートナーなの?」
着ぐるみ(?)を脱いだアオサギ男は、その容姿の不気味さに加え、声も美しくありません。
性格はひねくれている上、よりによって眞人が抱える、いちばんの心の傷。
“亡き母”のニセモノを見せて、その感情を弄ぶようなマネをします。
じっさい眞人は弓矢を当て、仕留めようとした行動も、決して振りではなかったでしょう。
フツウの作品であれば、むしろ憎まれるべき悪役。
しかも大物ではないので、ストーリー的にはひどい報いを受けて、
最期を迎えるようなキャラになる展開でしょう。
それが、ときに命がけとも言える、異世界の冒険を共にする相棒とは、どういう事なのでしょうか。
あなたの周りは良い人ばかり?
通常のアニメ作品であれば、主人公の仲間。
まして一番のパートナーとなれば、美少女やイケメンキャラが、割り当てられるところです。
もしアオサギ男のようなキャラが、メインで登場する展開になっては、視聴者は大ブ―イング。
作品の人気は揺らいでしまいますから、アニメ制作サイドなら、そうするのも当然ですね。
これは、まさに宮崎監督だからこそ出来た芸当で、“あえて”そうしたのは、おそらく間違いありません。
では、そこに込められた意味とは、何なのでしょうか。
それは・・
「あなたは人生で、どんな人と、どのような関係を築きますか?」
という、1つの問い。
あなたはこれまで生きてきて、周りはみんな良い人ばかりだったでしょうか。
だれも彼もが優しく親切で、いつも幸せだったでしょうか。
もちろん人にもよるでしょうが、きっと、そんな事はなかったハズです。
たとえば学校、たとえば職場、たとえばSNS。
「あの人は理解不能」「あの人の主張はおかしい」「批判で大炎上」
苦手な人もいる・・どころか。
むしろ世の中を見わたせば、そんな人ばかりと感じられる方も、少なくないかも知れません。
作中の眞人も疎開先の同世代に馴染めず、新しい家族には心を開かず、アオサギは敵でした。
異世界に行ってからは、少し寄り添い合う人物も、登場しますが・・
アオサギ男とは“しょうがないから”、とりあえず行動を共にしていました。
しかし一緒の時間を歩むうち、次第に「コイツ、こんな一面もあるんだ」といった感情が芽生え
ついには「トモダチだから!」と宣言する仲に。
その要因は、クチバシの穴を塞いであげた行動が、大きいと思われます。
つまり“眞人から寄り添った”という事が、非常に大きなポイントです。
あなたは周りの人々をどう見ますか?
さて、私たちの人生において人間関係は、幸福を左右するといっても過言ではありません。
ですから、本当にどうしても合わない、ストレスになって仕方がない人とは、
ムリに付き合わない方が良いでしょう。
とはいえ、逆にどうでしょうか?
「あー、あの人とは世代がちがうな」
「なんだか顔が、好みじゃないな」・・などなど。
一部分のフィルターで、繋がりをシャットアウトしていませんでしょうか。
アオサギ男レベルともなると、さすがに極端ですが
それでも人間、相手を深く知ろうとしないまま、判断してしまう事は多いです。
でも相手の内面をよく見て、そして時に眞人のように歩み寄れば、
ともに苦難を乗り越える、ほんとうの“友達”になれるかも知れません。
「世の中はイヤな人だらけ」なのか「友や仲間がたくさんいて幸せ」になるのかは
“あなた次第ですよ”と。
そのようなメッセージが、込められている気がしてなりません。
若さ至上主義へのアンチテーゼ?
ジブリ作品の全般にも言えることですが、とくにこの作品・・
登場人物の“平均年齢”が非常に高いです。
その要因は何と言っても、眞人の新居に住む、おばあちゃん軍団でしょう。
それも1人1人が個性的で、やりたい風にやって暮らしています。
まさに“元気高齢者”として描かれているのが、大きな特徴です。
これが通常の作品であれば、おそらく若いお手伝いさん達が登場し
いわゆる“モブキャラ”であっても、顔立ちが整って描かれるでしょう。
しかし“ハゲ頭の中年”が正体の、アオサギ男もそうですが・・
まったく世代の違う人物たちと、境界なく関係を築いているのが、同作品。
若い美男美女キャラで溢れる、近年のフィクション作品に対するアンチテーゼも、どこか感じます。
「現実は、そうじゃないでしょ?色々な年齢の、色々な容姿の人が、一緒に生きているよね。」
そんなメッセージが、伝わって来る気がします。
それに“若さ”をもてはやし、“老い”は避けたいという価値観。
これを抱き続ける限り、誰もが年を重ねるのですから、
つまり、あなたの人生は100%、不幸が待っていることになってしまいます。
でも、あなたが少し視点を変えれば、世界の見え方がまったく変わり
その瞬間から幸せへの道を、歩むことも可能なのだと。
この作品は、投げかけている気がします。
守護神おばあちゃん
前半ではそれぞれ勝手にやっているように見える、眞人とおばあちゃん軍団。
しかし異世界に行くと、じつは眞人の守り神となっていたエピソードも印象的です。
いま現実の日本は、超高齢化社会。そして親族でもなければ若者は若者、
お年寄りはお年寄りで、分かれてコミュニティを作りがちです。
でも本当は。年配者は若い世代に何かを伝えたいし、助けになってあげたい。
そして、あまり普段は表には出さないけれど、じつは大切に思っている。
宮崎監督もご年齢的には、そのお1人なので、ご自身の気持ちそのものかも知れませんね。
とにかく上記の設定には、強い想い入れを感じずにはいられません。
また作中の異世界は美しいながらも、人間を捕食する謎のインコなど、危険に溢れています。
お年寄りにとって、物理的なサポートは難しいですが、これまで培ってきた知恵や、祈りの力で若い世代を守ってあげたい。
この想いを知ってもらいたいと、伝えている気がしてなりません。
君たちはどう“幸せ”に生きるか?
まっすぐな性格でも、一見ひねくれている人でも。
この世の中で、幸せになりたくない人は、だれもいないと思います。
そう考えると同作品のタイトルは「君たちはどう“幸せ”に生きるか?」と
1単語を加えることも、できると思います。
そのために宮崎監督の示す“提案”が・・もちろん強制ではありませんが、
作中にはいくつも、散りばめられているように感じました。
・・「私はもう〇〇才だ」「私は容姿がよくない」「あの人と私は違う」
いま世の中には、様々なコンプレックスや、他人との距離で溢れています。
でもそれらは、実はあなたのバイアス。
価値観の縛りをなくし、もっと自由にものごとを観たとき、世界はずっと美しくなり、しかも広がり続ける。
そのメッセージを、スタジオジブリ集大成の同作品は投げかけているのだと、筆者は感じました。
・・今回の解釈が、あなたが考察する一助になっていましたら幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。