ポストシーズンでは、途中加入の選手がヒーローになる!? 過去3年とも、移籍選手がシリーズMVPを受賞
昨年のワールドシリーズでMVPを受賞したスティーブ・ピアース(ボストン・レッドソックス)は、その年の6月28日にトロント・ブルージェイズからレッドソックスへ移籍した。レギュラーシーズンに複数のチームでプレーし、その秋にワールドシリーズMVPを手にした選手は、ピアースの他には、1969年のドン・クレンデノンしかいない。クレンデノンは、6月15日にモントリオール・エクスポズからニューヨーク・メッツへ移った。
ワールドシリーズMVPは、1955~2018年に延べ66人が受賞している。そのうちの2人ということは、全体の3.0%だ。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズMVPを含めても、途中加入の受賞者は9人。ポストシーズンにおけるシリーズMVPの6.1%にとどまる。
ただ、過去3年のポストシーズンでは、毎年、途中加入の選手がMVPに選ばれている。2016年はアンドルー・ミラー(当時クリーブランド・インディアンズ/現セントルイス・カーディナルス)、2017年はジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)が、どちらもア・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズでMVPを受賞した。過去3年のポストシーズンでシリーズMVPに選ばれた選手は延べ11人――1シリーズ1人とは限らない――なので、その27.3%が途中加入ということになる。
3人のうち、ピアースについては、昨年11月に「FAになったワールドシリーズMVPの去就。レッドソックスは再契約したが、過去には松井秀喜らが退団」でも書いた。ミラーはシリーズ5試合中4試合に登板し、いずれもイニングをまたいで投げ、一度もホームを踏ませなかった。計25人の打者と対戦し、出塁させたのはシングル・ヒットの3人だけ。半数以上の14人から三振を奪った。バーランダーは第2戦と第6戦に先発し、計16イニングで1点しか与えなかった。
昨年のレッドソックスでは、7月25日にタンパベイ・レイズから移籍したネイサン・イオバルディも、ワールドシリーズで素晴らしい働きをした。第1戦と第2戦はそれぞれ1イニングを3人で終わらせ、第3戦は18回裏にサヨナラ本塁打を打たれたものの、12回裏から6イニングを無失点に封じた。また、ディビジョン・シリーズにMVPはないが、昨年のシリーズ(4カード)で最多の6打点を挙げた2人のうち、マニー・マチャド(現サンディエゴ・パドレス)は、7月18日にボルティモア・オリオールズからロサンゼルス・ドジャースへ移籍した。
今年もまた、途中加入の選手がヒーローになる――。これは、十分にあり得るシナリオだ。