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「日本ウエルター級の主役は俺だ!」プロ3戦目を控える野上昂生

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 2023年3月に東京農大を卒業し、プロ入りした野上昂生(こうせい)。この4月に2勝目を挙げたばかりである。目下2戦2勝2KO。

 「なかなか試合が決まらなくて、去年は1試合しか出来ませんでした。次は8月に組んでくださいと、ジムには伝えています」

撮影:筆者
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 野上がボクシングを始めたのは小学5年生の時。当時、サッカー少年だった彼は、長身ながらやや太めのMFだった。長い時間は走れないため、GKとして起用されることが増えていた。

 「痩せたい、という思いで近所にあったボクシングジムに入門したんです」

 ボクシング効果で体が締まる。運動量も増え、サッカーとボクシング、2つの競技を続けるつもりでいた。だが、故郷である長崎松浦市の中学には、サッカー部が無かった。

 「田舎でしたから。それで、野球部に入り、部活の後、ボクシングジムに通う生活を送りました。朝はロードワークと思って、駅伝部の練習に参加していましたね」

撮影:筆者
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 野球でのポジションは投手と外野。元々左利きの野上は、バッティングセンスに恵まれていた。

 「サッカーより、遥かに向いていましたね(笑)。ホームランを沢山打ちましたよ。3つの高校から野球でスカウトを頂きました。でも、団体競技よりも、自分が強くなればなるだけ結果を出せる個人競技の方がいいと思ったんです。高校からはボクシング1本に絞りました」

 中学入学直前からアマチュアのリングに上がった野上は、高校生を相手に勝利を収めていた。しかし、中1の冬に2歳年上の日商学園の選手に1ラウンド34秒でRSC負けする。

 「悔しくてたまらなかったですよ。絶対にこれでは終われないと火が灯りました」

 その後、中3で出場したU15の大会で準優勝する。勝者は須永大護だった。高校2年の国体、高校3年のインターハイ決勝でも、同じ相手から黒星を喫した。

 「高2の選抜大会では優勝しましたが、いつか須永にリベンジしなくてはと考えていました。大学4年の関東リーグで、ようやく借りを返したんです」

撮影:筆者
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 大学時代はキャプテンを務め、誰よりも真面目にボクシングに向かった。目標に向かって一直線に進む背中を見せながらチームを引っ張っていた野上は、最後のシーズン終了後、迷わずプロ入りを決める。

 「ワタナベジムには、大学時代からちょこちょこスパーリングで通っていました。雰囲気の良さで決めたんです。

 アマチュア時代はミドル級やライトミドル級で戦っていましたが、減量のやり方を学び、自分の適正ウエイトは147パウンドだと分かりました。ウエルターこそ、最大の力を発揮できるなと感じています。これまでに日本人でウエルター級の世界チャンピオンは誕生していませんので、目指しています」

撮影:筆者
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 今日、日本のウエルター級には、OPBF東洋太平洋ウエルター級、WBOアジア太平洋と2本のベルトを持つ佐々木尽がいる。野上はその佐々木戦を熱望する。

 「すぐにでも挑戦したいですね。勝つ自信はあります。ウエルター級で上に行くのは自分ですよ」

 177センチのサウスポー、野上昂生に注目だ。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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