インディ500予選で佐藤琢磨が最前列スタートを獲得!高い勝率の3番手から好発進だ。
「まずは予選、フロントロウ、やりました!」
チームのSNSを通じたビデオメッセージでガッツポーズと共に佐藤琢磨は喜びを表現した。現地時間8月16日(日)に米国インディアナ州で行われた「インディアナポリス500マイルレース」(以下、インディ500)の予選で、佐藤琢磨は上位9台のスターティングフリッドを決める最終予選、ファストナイン(Fast Nine)に進出。平均スピード時速230.725マイルを記録して3番手となり、日本人選手で初めて決勝最前列のスタートを勝ち取った。
インディ500のグリッドは1列3台
F1モナコGP、WECル・マン24時間レースと並んで「世界三大自動車レース」に数えられるインディ500。年間シリーズ戦として開催されている「NTTインディカーシリーズ」の中の1戦ではあるが、今年で104回目を迎えるインディ500だけは伝統的な特別ルールでレースが行われていく。
まず、スタート位置となるスターティンググリッド。現代のサーキットレースでは1列に2台が並ぶのが恒例だが、インディ500は1列3台のスターティンググリッドが組まれるのが伝統。
そして、そのポジションを決める公式予選はレースの1週間前に開催されるのがインディ500の恒例になっている。スターティンググリッドが早々と決定し、決勝レースまでの1週間はプロモーション活動やイベントが数多く実施され、ドライバーたちはそれに奔走する。最大で約40万人を動員する世界最大級の自動車レースフェスティバル「インディ500」をジワジワ盛り上げていこうという習わしだ。
しかしながら、今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響でお祭り騒ぎとはいかない。当初、動員数を減らして開催予定だったが、再び米国で急激な感染者数増加が起こっており、史上初の無観客レースとして開催されることになった。
そんな異例の大会となった第104回・インディ500で佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガンレーシング/ホンダ)はフリープラクティスから好調。予選1回目でギリギリ9位に入り、ファストナインに進出。そこから見事、3番手のスターティンググリッドを奪取したのだ。
3番手スタートは高い勝率!
過去103回の歴史を持つインディ500では歴代の勝者が何番手スタートから優勝したかという統計が存在する。
最も多くの勝利数を誇るのは当然ながら1番グリッド=ポールポジションで過去21回の大会でポールトゥウインが成し遂げられている。ポールポジションからの優勝はマシンの信頼性が高まってきた1990年代から増加してきたが、直近の2010年代には僅か1回しかポールポジションからの優勝はない(2019年、シモン・パジェノー)。つまりはポールポジションを取っても勝てるかどうか分からないのがインディ500の難しさだ。
次いで勝利数が多いのが佐藤琢磨のスタート位置となる3番グリッドだ。過去12回の大会でウイナーが誕生しており、直近では2018年にウィル・パワー(チームペンスキー/シボレー)が悲願のインディ500初優勝を成し遂げている。勝率約12%で2位という3番グリッドから佐藤琢磨がどんなレースをしていくか楽しみである。ちなみに佐藤琢磨が優勝した2017年は4番グリッドからのスタートだった。
2010年代は15番手スタートからの優勝(2015年)、16番手からの優勝(2012年)、19番手からの優勝(2014年)という中段スタートからの優勝という例もあり、予選の順位と優勝はリンクしない部分もあるが、それらの例はいずれもチームペンスキー、チップガナシ、アンドレッティという巨大組織のチームによって成し遂げられたものである。
佐藤琢磨のレイホール・レターマン・ラニガンレーシングはグレアム・レイホールも8番グリッドを獲得するなど、チーム全体で速いマシンを作り上げてきている。決勝時にコンディションが変わり、マシンセッティングの方向性が外れてしまう可能性も大いにあるのがインディ500の難しさだが、そこは昨年のインディ500で怒涛の挽回で3位まで追い上げた佐藤琢磨を見ると、ベテランの経験とチーム力で何とかしてくれるのではないかと期待してしまう。少なくとも2度目のインディ500優勝に向けて良い状況にいるのは確かだ。
第104回・インディ500の決勝レースは米国現地時間の8月23日(日)に開催。日本では8月23日(日)の深夜25時からGAORAスポーツで生中継される。