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永里優季がなでしこジャパンへの思いを激白。「代表に戻る機会があるとしたら、ベンチでもいい」

森田泰史スポーツライター
長く日の丸を背負った永里(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

彼女はいま、どんな思いを抱いているだろうか。

なでしこジャパンは4月にヨルダンで行われたアジアカップで優勝を達成した。5位までのチームに与えられる2019年フランス・ワールドカップの出場権を獲得。ノルマを果たすだけでなく、前回大会に続き、アジア女王という称号を手にしている。

■状況を整理

だがヨルダンの地に永里優季の姿はなかった。ただ、それを語る前に状況を整理する必要があるだろう。

高倉麻子監督は就任後、スウェーデン遠征、アメリカ遠征に永里を呼んでいた。2016年6月と7月に行われた国際親善試合でアメリカ戦、スウェーデン戦の2試合で先発出場。高倉監督の初陣となったアメリカ戦では得点を記録している。

しかし、その後、永里から「クラブに専念したい」という申し出があったことを理由に、高倉監督は2017年3月のアルガルベカップ以降、彼女を招集していない。

一方で永里は代表引退を表明したわけではない。依然として現役でプレーを続けており、「招集可能な選手」の一人だ。なおかつ、永里が現在「戦場」として選んでいるのは女子サッカーの最高峰リーグであるアメリカのNWSL (ナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ)である。

■なでしこに必要なCFタイプ

アレックス・モーガン(アメリカ)、クリスティアン・シンクレア(カナダ)、ウジェニー・ルソメ(フランス)、サマンサ・カー(オーストラリア)、フィフィアネ・ミーデマ(オランダ)など、世界にはトップクオリティを備えたストライカーがいる。

今回のアジアカップでも、中国や韓国に質の高いストライカーがいたら、もっと苦しめられたに違いない。また韓国戦では岩渕真奈、田中美南、菅澤優衣香、横山久美と4人のFWがピッチに現れたが、なでしこはこの試合を無得点で終えている。

横山を重宝すれば面白くなりそうだが、今大会で彼女が高倉監督の信頼を完全に勝ち取ったかと言えば、そこには疑問符がつく。また横山や岩渕真奈という小柄の選手たちが輝くには、前線で確実に起点になれる選手が必要になる気がする。

■代表への想い

永里は今、なでしこにどんな思いを抱いているのか。率直に話をぶつけた。

「自分が劣っているという感覚はないです。自分の中では、自分の能力は上がっている。ただ、ケガがあったり、自分のパフォーマンスを引き出し切れていない時期がありました。今、ようやく、活気を取り戻してきたところかなと思っています。(モチベーションや活気を)見つけられたのが大きかったかな。迷いやモヤモヤが消えたから。今の代表を見ていて、『自分だったら、この選手を、こういう風に生かしてあげたい』と思ったりします。やっぱり、日本人として、日本への想い、日本代表への想いというのは、強いです」

16歳でA代表デビューを飾った。代表を背負う意味や覚悟は、当然ながら理解している。

「代表に戻る機会があるとしたら、ベンチでもいい。そうしたら、ピッチ内にいる選手や、若い選手に対して、手助けとなるようなことをしたいです。まだ伝えられることは、たくさんあるはずなので。自分が若い時に、そういう選手たちが周りにいてくれました。性格悪いって言われていますけど(笑)他人の心を感じることだったり、そういうのは、海外生活で、かなり養われてきたと思います。言葉が分からないから、ノンバーバルな状況で、察知しなければいけないところがあって。そういった力は、国内の選手にはない力として、自分に備わっていると思います」

年上の選手の存在を、永里は確かに感じてきた。山郷のぞみ(現ちふれASエルフェン埼玉のGKコーチ)をはじめ、代表にはいつも陰で支えてくれるプレーヤーがいた。

「上の選手たちがフォローしてくれる。そういう信頼感だったり、安心感だったり...。そういうものがないと、プレーに戸惑いが出てきてしまったりします。アメリカに行って、『精神的に成長したね』とよく言われるんです。自分では、あんまり感じないんですけど(笑) より本質的になったというか、シンプルになったというか、そういうことなのかな。余計なことを考えなくなりましたね」

■シカゴで結果を出せば無視はできない

今回のアジア杯には、川澄奈穂美(シアトル・レイン)がおよそ2年ぶりに代表に招集され、話題を呼んだ。川澄は昨季24試合に出場して6得点9アシストを記録。NWSLでアシスト王に輝いた。

要は、高倉監督が無視できない結果を残したのである。永里に現在、求められるもの。それは結果だろう。シンプルな競争原理である。

昨季こそ負傷に苦しんだ永里だが、今季は調子を取り戻している。開幕から8試合を消化したNWSLで、肉離れをしていたために欠場した最初の2試合を除き、6試合に出場。そのうち、4試合で先発している。UTAHロイヤルズ戦ではポスト直撃のシュート、スカイ・ブルー戦ではバーを叩くヘディングシュートを放っており、状態は非常に良さそうである。

シカゴにはサマンサ・カー(オーストラリア代表)がいる。アジア杯参加のためチームを離脱していたカーが復帰して、永里がカーと共にレギュラーを張っていたら、いよいよ真剣に永里の招集が検討されるべきだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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