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W杯優勝を目指すアルゼンチンとメッシを活かす「三銃士」の存在。スカローニの試行錯誤と嵌りかけるパズル

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶメッシとアルバレス(写真:ロイター/アフロ)

今度こそ、という想いは強い。

現在、カタールで行われているワールドカップにおいて、ベスト8に進出したチームのひとつがアルゼンチン代表だ。グループステージ第1節でサウジアラビアに足元を掬われたが、そこから持ち直して準々決勝まで勝ち進んでいる。

決勝トーナメント1回戦のオーストラリア戦では、リオネル・メッシがキャリア通算1000試合出場を達成した。だが彼にとって、いま重要なのはカタールW杯期間中にそれを1003試合まで伸ばせるかどうかだろう。

オーストラリア戦でゴールを決めたメッシ
オーストラリア戦でゴールを決めたメッシ写真:ロイター/アフロ

リオネル・スカローニ監督は、メッシを中心にチームを作ってきた。

しかし、カタールの地で、アルゼンチンは出鼻をくじかれた。初戦でサウジアラビアに敗れ、早期敗退の危機に瀕した。それが指揮官に決断を促した。選手起用と配置の変更だ。

大きかったのは、エンソ・フェルナンデス、アレックス・マクアリステル、フリアン・アルバレスの起用である。

■ワンアンカーの採用

まずはエンソのアンカー起用だ。スカローニ監督は、レアンドロ・パレーデス、ロドリゴ・デ・パウル、ギド・ロドリゲスをボランチで使ってきた。また、形としてはワンボランチのアンカーシステムよりダブルボランチを好んでいた。実際、グループステージのサウジアラビア戦、メキシコ戦ではダブルボランチの布陣が採用されている。

だが3試合目のポーランド戦で、スカローニ監督はエンソをワンボランチで使った。そして、これが嵌まった。

このアルゼンチン代表に足りなかったのは、ハビエル・マスチェラーノのような選手だった。準優勝を果たした2014年のブラジルW杯では、マスチェラーノが獅子奮迅の活躍を見せていた。中盤で危険の芽を摘み、相手のカウンターを未然に防げるような選手が必要だったのだ。

また、攻撃面ではエンソがダウンスリーの動きで最終ラインに下がる。エンソと2CBが3枚でビルドアップを行い、後方からの球出しが円滑になっている。

次に、マクアリステルである。

マクアリステルの起用はエンソのアンカー配置とリンクする。エンソがカバーしきれない中盤のスペースを、マクアリステルが埋めるのだ。

加えて、マクアリステルはメッシの守備負担軽減にも貢献している。ディフェンス時、メッシをゼロトップの位置に据え、その時に前線まで出ていってプレスを掛けるタスクを担うのがマクアリステルだ。

最後に、アルバレスだ。

今大会で、当初、レギュラーとして考えられていたのはラウタロ・マルティネスである。だが大会が進むにつれ、アルバレスとラウタロの序列は逆転した。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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