令和の時代の優れた食品関連企業の見分け方とは?ヒントはNHKの大河ドラマ「いだてん」報道にあり
2019年4月27日から5月6日までの10連休が終わった。連休中に元号が「平成」から「令和」に変わった。5月7日は、「令和」の元号になって初出勤という人もいるだろう。
新年ではないが、元号が変わることでリセットされ、新たな何かが始まるような期待もある。
「令和」という元号の考案者である中西進氏は、2019年5月4日の講演で、令和の「和」が「和をもって貴し(とうとし)となす」につながると述べている。
外務省は2019年4月、令和を英語で表す際「beautiful harmony(美しい調和)」に統一する見解を述べた。
筆者がテーマとする「食」。
食品関連企業は、この新時代、どのような尺度で企業経営を進めるべきだろうか。
判断基準:売上至上主義かどうか
優れた食品関連企業の見分けるポイントは、売上至上主義か否か、ということだ。
「いくつ売りました」「何億円・何兆円達成」など、自社の売上金額や販売数量などを誇る。
一方、持続可能性に関することは、具体的でなく、抽象的な目標に終始する。
そんな企業は、平成どころか、昭和の時代で終わっている。
食品廃棄を最小限に抑え、地球の持続可能性を保つ努力をしているかどうか
農林水産省は、2019年3月31日をメドに、食品関連企業が5年間で食品廃棄を減らすための数値目標を設定していた。
2015年9月の国連サミットでは、2030年までに達成する17の目標(SDGs:エスディージーズ:持続可能な開発目標)が採択された。
背景には、このままの暮らしを続けていくと、地球が1つでは足りない、という緊迫した状況がある。
「自社さえ儲かればOK」では済まないのだ。
自社の持続可能性のみならず、地球自体の持続可能性を保たせる責任が、企業にも、個人にも、ある。
売上金額や販売個数を誇る、その裏側では、どれだけ廃棄を抑制できているか、食品ロスを減らす努力をしているかどうかが、今まで以上に評価のポイントになってくる。
「世帯視聴率」という古い評価軸で報道されてばかりのNHK大河ドラマ「いだてん」
筆者は、NHKの朝ドラ(朝の連続テレビ小説)も大河ドラマもほとんど見ない。「あまちゃん」と「龍馬伝」、「いだてん」は、録画で観ている。
「いだてん」は、放送開始以来、「視聴率」の低さが報道されてきた。
その「視聴率」とは「世帯視聴率」。
筆者が長年勤めてきた食品企業では、テレビコマーシャルの枠を購入する際、「世帯視聴率」ではなく、「個人視聴率」という指標を使っていた。もう昭和の時代のように、一家そろって同じ番組を見る時代ではない。同じ世帯の中でも、世帯員が別々の番組を見るようになってきている。だから、「F1(エフワン)層」(20〜34歳の女性)のように、自社商品を購入する人を対象に絞り、テレビコマーシャルを投入する。
メディアコンサルタントの境治(さかい・おさむ)氏は、記事「いだてん」は大河ドラマに新しい視聴者を誘う起爆剤だ~「西郷どん」との視聴データから~の中で、
と述べ、「世帯視聴率」という時代遅れの指標が、相も変わらず使われ、報道で強調されていることを批判している。
境氏は、視聴率ではない、「視聴質(しちょうしつ)」という評価軸についても記事を執筆している。「視聴質」は、「テレビの前の滞在人数と滞在時間」(VI値)、そして「テレビの画面を注視した人数と注視時間」(AI値)という2つの評価軸による評価を掛け合わせて算出するそうだ。
売上金額だけでなく、食品廃棄と併せて評価すべき
NHK大河ドラマの「いだてん」が、これまで珍重されてきた「世帯視聴率」でのみ報道される風潮は、あたかも、売上至上主義の食品関連企業が、「なん億個、販売達成!」などと、販売数量や売上金額を掲げて勝ち誇る姿のようだ。
それだけたくさん売ったのはわかった。
で、その裏で、いったい、どれだけの食べ物を捨てているの?と聞かれると、答えられない。
SDGsのバッジを背広につけたり、「わが社は2030年までに・・・を目指します」と公式サイトで宣言したりしていても、社会全体の持続可能性を目指しているかどうかは、現場の従業員やパート・アルバイトに聞けば、すぐわかってしまう。
彼らは「何、それ?」と、公式サイトに掲げられたカッコイイ言葉や目標を知らない。
あ、末端まで浸透していないな、と、すぐバレてしまう。
本気で思って全社一丸となって取り組んでいたら、現場の人間こそ腹落ちし(理解して納得し)、日々の事業活動に反映されているはずだ。
食品関連企業は、自社の評価軸(KPI:Key Performance Indicator:重要業績評価指標)のうち、売上金額や販売数量だけを社会へアピールするのでは、むしろ逆効果だろう。食品廃棄(食品ロス量・廃棄金額)という持続可能性を表す評価軸でも評価し、社会に対して透明性を持たせる(見える化)する必要がある。
食品関連企業には排出事業者責任(環境省HP)がある。
資源のロスを見える化する「MFCA(マテリアル・フロー・コスト会計)」
ドイツから日本に紹介された環境会計手法に、マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting:MFCA)がある。
原材料や資材の廃棄など、ロスとなったコストや物量を見える化するものだ。
新元号「令和」に含まれる「調和」は、SDGs(エスディージーズ)の理念である「誰一人取り残さない-No one will be left behind」にも繋がる。これは、一者の独占や暴走をよしとするものではない。
令和の時代の食品企業は、いくら売ったか、だけではなく、どれだけ捨てたか、でも評価されるべきだ。
その評価軸による実績を隠し、売上金額や販売数量のみを鼻高々に誇っている、食品関連企業がいるとすれば、いくら広告主(クライアント)であろうと、メディアは評価すべきではない。大量の食品ロスを排出しているのに、あたかも「環境配慮に取り組んでいます」的なことをアピールする提灯記事も出すべきではない。
政党も同様だ。そのような企業から献金を受けているからといって、まっとうな批判をつぶしたり、目をそらしてスルーしたりすべきではないだろう。