自衛隊の都市伝説「レーダー電波を浴び続けると女の子しか生まれなくなる」の調査結果
自衛隊では以前から「戦闘機パイロットはレーダー電波の影響で男性の生殖機能に障害が生じて子供は女の子しか生まれてこなくなる」という都市伝説が流れていました。しかし実際に自衛隊のパイロットの子供を調べたところ、生まれて来た子供の性比の差は全く見られなかったという報告があります。航空自衛隊がアンケート調査したもので、1996年9月「宇宙航空環境医学」33巻第3号に収録されています。
この航空自衛隊によって行われたアンケート調査はサンプル数が少なくてまだ証明にはならないのですが、戦闘機パイロットと戦闘機レーダー管制者の合計115人の子供の内訳は男子58人・女子57人と全く性別に差が見られない結果となっています。
都市伝説が生まれてしまったきっかけは、海外の研究で戦闘機の機動による高G暴露とレーダーによる電磁波暴露が子孫の性比に影響を与えるかもしれないという報告が一部にあり、医学的に証明されないまま噂話として日本にも持ち込まれて、自衛隊では現象として起きていないにもかかわらず事実として広まってしまったというのが経緯のようです。海外の研究では影響があったという報告と影響がなかったという報告がそれぞれ複数あり、はっきり分かっていません。つまり日本の報告を含めて影響ある・なしがまだどちらとも言えないのが現状です。
このため現在でもはっきりと断定することは出来ないのですが、そもそも戦闘機の機動による高Gの影響なのかレーダー電波の影響なのかすらもこれまでの研究では区別が付いていません。激しい機動を行わず強力なレーダーも積んでいない輸送機のパイロットには影響が見られないという報告もあります。今後の研究で早期警戒管制機や地上レーダー基地のレーダー管制者の子供を調査するなど、条件を絞って調査数を増やしていかないとレーダー電波の影響かどうかは判断は出来ないでしょう。
ただし少なくとも自衛隊では「戦闘機パイロットやレーダー管制者は子供が女の子しか生まれなくなる」という現象はまだ一度も報告されておらず、否定するアンケート調査しか存在しません。まことしやかに「自衛隊では~」と唱える話を見掛けたら、それは根拠のない都市伝説であると言えます。