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日本国籍取得のブロードハースト マイケル、日本代表復帰は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
過去優勝2回の南アフリカ代表戦では防御などで存在感を発揮。(写真:アフロ)

 南アフリカ代表を破るなど歴史的な3勝を挙げた2015年のワールドカップイングランド大会時、ラグビー日本代表には海外出身の殊勲者が揃っていた。

 そのひとりがマイケル・ブロードハースト。ニュージーランドから2009年に来日した30歳だ。日本代表としては、国内居住3年以上という代表規定をクリアしていた2012年秋に初キャップ(国際真剣勝負)を取得した。

イングランド大会時はオープンサイドフランカ―に入り、タックルや密集戦でのボールの絡みで出色の働き。大会以降は協会関係者が「もう代表は引退した」と断じたが、本人の実感は異なるところにある。

 今季の国内トップリーグ開幕を間近に控えた2017年夏、このブロードハーストが日本国籍を取得した。

 ブロードハースト マイケルに登録名を変えた。

 2010年からはリコーに所属も、昨季までは同時出場最大2人までという外国人枠もあり途中交代も少なくなかった。今季はロックとして開幕からフル出場しており、チーム関係者から喜ばれている。

 パスポート取得の経緯、日本代表復帰への意欲は。某日、都内での練習後に心境を語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(一部編集箇所あり)。

――まずは、ここまでの2勝2敗のリコーの戦いについて伺います。どう映りますか。

「感覚的にはとてもいいです。小さいミスで上手くいっていないところもありますが、(14―35で敗れた第4節の)ヤマハ戦もいいパフォーマンスができた。フィニッシュまで行けていないところさえ直せれば、もっと上に行ける」

――ご自身もフル出場が続いています。

「最初は苦労しましたが、ヤマハ戦からは少しゲームフィットネスが付いてきました。80分プレーするのが、好きです。負けた時の言い訳ができないのが、80分の出場というものです。パスポートを取った理由の半分くらいは、80分のプレーがしたいということです。ただ、年も重ねているので、トレーニングでは少し優しくしてほしいかな。ハハハ」

――日本国籍取得の経緯については。

「多分、日本に来た(海外出身の)選手なら、誰でも考える問題だったかもしれません。ただ僕は、数年前にチームの方から話があるまでそのことをすっかり忘れていました。話をもらった時は、『もしリコーが私にパスポートを取って欲しいのであれば、そうします』と伝えました。チーム、会社、僕にとって色々な面でいいことがあるので。日本人になれて、すごくいいです。どうせならもっといい名前を考えたらよかったですが!」

――家族の理解は。

「皆、ハッピー。すごくサポートしてくれました」

――日本代表への復帰については。

「何人かにはそう聞かれました。いまのところは、そのことを後ろに置いているというか…。日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチという方をよく知っているうえで考えると、彼はワールドカップ(2019年の日本大会)にだけ選手を呼ぶことはない。ただ、私には5歳以下の子どもが3人いて、家族は日本にいるわけではないので、僕が(常時)日本代表へ行くと奥さんが厳しい状態になる…。もちろん、絶対に行かないとは言えないです。日本代表の試合を観て、時にはチームの一員になりたいとも思います。…状況次第、ですね」

――ジョセフヘッドコーチとの面識は。

「ミーティングなどは、何度かあります。最後に話したのは、今年の6月です。アイルランド代表戦の時、『入ってくれないか』と。ただ、当時は怪我をしていたので」

――確かに日本代表では、6月24日のアイルランド代表戦を前にロックの故障者が相次いでいました。最終的には、代表引退していた「トモ」ことトンプソン ルークが限定復帰。フル出場しましたね。

「ロックとしては、僕よりもトモの方が上ですから! 僕はあのレベルではロックをしたことがないので、あの時に出たら色々と苦労したのではと思います」

――日本代表とリンクするサンウルブズへの参加は。

「一番、最初(発足前の2015年)に『ノー』と言いました。いまのところはない、と思っています。なぜなら、僕も年が上になってきて、サンウルブズと日本代表でプレーをしたらリコーでベストプレーができなくなるからです。リコーは僕のことをすごく大切にしてくれている。トップリーグシーズンに怪我をして現れるなら、ベストコンディションを作った方がいい」

――ナショナルチームがピラミッドの頂点に置かれながら、実際の優先順位は選手の給与を払っている国内所属先の方が高い。これが日本ラグビーの現実であり、構造的な課題かもしれません。今後は改善されるかもしれませんが。

「他の国とはまた違うところですね。ニュージーランドでは、すべての選手がニュージーランド協会に所属しています。スーパーラグビーのクラブの選手についても、誰を休ませるかなどでいろいろとコントロールがなされます。ただ、日本では1年に2~3週しか休みのない選手もいます。それを1~2年続けたら、苦しくなると思います。特に、年を重ねた選手にとっては」

――改めて、今後に向けて。

「キャプテンという役職の選手は他にいますが、リーダーみたいなプレーをしたいと常に思っています。皆をがっかりさせたくなくて、ベストを尽くしたいといつも考えます。リコーには今季、いい選手も集まっている。是非、成功したい。(空中戦の)ラインアウトがうまくいかなければ、僕の責任です」

 身長196センチ、体重110キロ。攻防の局面へ参加し続ける姿勢は、いまも健在だ。国内独特の構造下ではリコーでのハイパフォーマンスを優先。トップリーグの短縮化が見込まれる2018年には、どんな決断を下すか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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