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帰国のリッチー・モウンガ、入部前からブレイブルーパスの勝ち方イメージ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
周囲と連携が取れている(写真提供=JRLO)

 ニュージーランド代表の司令塔(スタンドオフが)として昨秋のワールドカップフランス大会で準優勝したリッチー・モウンガは、今季の国内リーグワンを席捲している。

 前年度1部12チーム中5位だった東芝ブレイブルーパス東京で開幕から10番をつけ、鋭いラン、シャープなプレー選択で15年ぶりの開幕8連勝をもたらしている。

 入部早々にリーダーシップを取っている。その理由を聞かれれば、「そう評価されたくてやっているわけでないのですが…」と前置きして言う。

「(スタンドオフが)周りの選手と繋がって繋がりながらリードすべきポジションだから。また、一緒にプレーする仲間のことはできるだけよく知りたいし、ラグビー選手としてだけじゃなくて、人間としても仲良くなる、人と繋がることも好きなので」

 話したのは4月上旬。父の逝去に伴い一時帰国する直前のことだ。場所は都内拠点。

 当時は11勝1敗で2位を保っており、まもなく2シーズンぶりのプレーオフ行きを決めることとなる。ブレイブルーパス入りの背景、好調なチームの裏側、自身のビジョンなどについて語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——改めて、東芝ことブレイブルーパス入りの経緯を聞かせてください。

「もともと東芝でプレーしている、もしくはしていたニュージーランドの友達からここがどういうチームカラー、文化を持っているのかを聞いていました。トム・テイラー、マット・トッド、セタ・タマニバル、ジャック・ストラトンからです。(指導陣および元コーチには)トッド・ブラックアダー、ジョー・マドックも。彼らが在籍していることもあり、ニュージーランドのテレビでリーグワンが放送される時は東芝のラグビーを見るようにしていました。彼らが普段どういうところでやっているのかを普通の友達との会話として聞いていたので、東芝に行けるかもしれないという話が浮かぶ前からある程度のイメージがありました」

――日本行きを決める際、リーグワンの他のクラブからもラブコールはあったのですか。

「ありました。ただ、東芝に決めるにあたっては『家族も心地よく暮らせるか』『自分がもっともそのチームにいい影響を与えうるのか』が最大の決め手になりました。

 まず、ディビジョン1で戦いたい思いがありました。また、以前から東芝の動向を追っていて、優勝になかなか手が届かない、あと一歩というところにいるのがわかっていました。もしかしたら自分の経験、知識でいい影響を与え、優勝に貢献できるスペースがあるんじゃないかと」

——入部後は、チームのシステムを理解するのが早かったと聞きます。

「これまで長くプロとしてプレーしてきて、その間、シェイプ(陣形)、戦術、相手の戦い方を分析するなか、一定の知識や経験がついていたからかなと感じます。また、あとは本当にラグビーが好きなので、その気持ちを突き詰めてきたことで、年を追うごとにラグビーへの深い理解力を得られたのかもしれません。また、東芝に入ると決まってからも、東芝がどういうラグビーしようとしているのかを自分なりに理解しようとして、さらに、ここに自分が影響を与えたり、何かいい変革を加えられたりする部分はあるかを思い浮かべながら過ごしてきた」

——ブレイブルーパスのアタックの特徴は。

「複数の脅威を毎フェーズ用意してアタックできている。スペースを全員で把握して、そこを的確につく意識がある。そのスペースを突いたり、それぞれが相手の脅威になったりするために、シンプルなスキルの遂行力を高いレベルにできている。

いま話したことは僕が来る前から東芝の DNA としてあったものだとは思います。それを本当の意味で結果に繋げることの助けになれているのであれば、非常に嬉しいです。

 リーグワンでいい位置についていますが、同時にもともと伸びしろ——プレッシャーがかかるなかでのスキルの遂行力、不要なペナルティーをできる限り減らしていくこと——がある。まだまだできると思うとワクワクします」

 チームは22日、都内で定例会見を実施。トッド・ブラックアダーヘッドコーチは、モウンガが21日までに帰国していると明言。家族との暮らしを重んじて来日したプレーメーカーの復帰までのプランについては、このように語った。

「この2週間はメンタル的に大変だったと思う。(復帰へは)身体の状態、フィットネスがどれくらいなのか、必要なトレーニングができているのかを確認、評価し、対応したいです」

 件のインタビューで、モウンガは「突き詰めると、ラグビーはチームスポーツです」とも述べた。温かみのある繋がりのなかで、カムバックが待たれている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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