これぞ真骨頂!六甲ミーツ・アートのオープニングパフォーマンスが凄すぎて泣いた【神戸市】
この上演プログラムは「Becoming Natsue」という短い映像を見る所から始まりました。
スクリーンには男性(アルゼンチン出身のダンサー・振付家、ダニエル・プロイエット)が白塗りの女形への化粧をしている姿が映し出され、そこにNatsueという、生まれた子共と引き離された母親の悲しい物語の朗読が重なります。それは、後の舞踊へと繋がっていくプロローグ。
場所は変わってSIKIガーデンの野外ステージ、上空には雲が掛かり始めています。遠くの方では雷らしき音が…。第一部「Natsue」が始まり、黒い着物姿の女形が現れて美しく舞踊を舞います。
見惚れている側からやがて空が急変、瞬く間に雨に包まれて徐々に激しくなっていきました。そんな中、演者も観客もびしょ濡れのままその場から離れようともせず舞台は続きます。
最後に、土砂降りの雨の中で踊り続ける姿が、さっきの映像のラストでNatsueが荒波の中へと姿を消し去る話とシンクロして、深い悲しみがギュッと伝わってきました。「見えつ 隠れつ…」繰り返す言葉と、激しく音を打つ三味線が森に響き渡った圧巻のクライマックス。
ここで物語は転換します。第二部の「Goddamn Beauty」が、今年の六甲ミーツ・アートで新しく製作された川俣正によるインスタレーション「六甲の浮き橋とテラス」で行われました(※)。トランスジェンダーへの社会的差別に対する、身体表現でのメッセージ作品です。
4曲で構成されたステージで、衣をはためかせ、水上に浮かぶ小さな空間で全身全霊での舞をあらわにしたダンサー。穏やかな水面は鏡となり、ありのままの姿を見よとばかりに彼と世界を映し出しています。
まるで今、この世界に生まれ出たばかりのようなエネルギー溢れた存在となって繰り広げられるダンス。人間という生き物の美しさと悲しさ、肉体の弾力、躍動。その力強い動きから伝わるものは畏怖さえも感じられるほどの純粋さで、私の目頭ではずっと涙が揺れ動いていました。
Artist in Residence KOBE「AiRK」によって招聘されたダニエル・プロイエット(ダンサー・振付家)、森山未來さんキュレーションによるこの2日間の「Rokko Meets Art × Artist in Residence KOBE 山頂でのオープニングパフォーマンス」。舞台が終わってからも拍手は鳴り止まず、大きな感動を呼んでいました。
AiRKの今後の動きからも目が離せませんし、ここからいよいよ六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyondも開幕です。その空間でしか出会えない奇跡を、どうぞその目で!
六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond
六甲山頂にて開催中
2023年8月26日〜11月23日
078-891-0048
Rokko Meets Art × Artist in Residence KOBE 山頂でのオープニングパフォーマンス (←終了致しました)
2023年8月26日(土)・27日(日)
トレイルエリア内新池及びROKKO森の音ミュージアム内SIKIガーデン特別会場にて
映像作品「Becoming Natsue」
出演 Daniel Proietto
撮影・編集 野田亮
テキスト Alan Lucien Øyen and Andrew Wale(パフォーマンス “Simulacrum”より抜粋)
衣装協力・小道具 Art Gallery Modern Millie
撮影場所 ガーデンテラス 蘇州園
第一部「Natsue」
出演 Daniel Proietto
振付 八世藤間勘十郎
第二部「Goddamn Beauty」
演出・振付・出演 Daniel Proietto
スタッフクレジット
舞台監督 尾崎聡
舞台進行 武吉浩二(カンパーナ)
照明・音響 盛田久史(株式会社P.A.F)
衣装協力 川上瞳
記録撮影 岩本順平(DOR)、おでん、須川朝絵
キュレーター 森山未來(Artist in Residence KOBE)
制作 高見澤清隆、内藤紫都(六甲ミーツ・アート beyond 2023)
企画協力 Artist in Residence KOBE (AiRK)
企画 六甲ミーツ・アート beyond 2023
※この記事は、2日間の公演取材となっています。
AiRK様に取材協力を頂きました。
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