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大都市圏の会社員は「ワークライフバランス」より「ワーク”ラッシュ”バランス」を考えるべき?

横山信弘経営コラムニスト
再びはじまるか「通勤ラッシュ」(写真:アフロ)

■本当にテレワークは定着するのか?

政府は14日、39県において緊急事態宣言を解除した。東京、大阪など残る8都道府県についても、21日をめどに解除する意思を安倍首相は示した。

また、感染拡大を再確認した場合、「2度目の緊急事態宣言もあり得る」とも安倍首相は述べた。しかし、この発言の抑止力はどれほどあるだろうか。

まるで伸びきったゴムが切れるように、一気に人出が増えるのではないか。そう懸念している。

今回の「一斉休校」「休業要請」「不要不急の外出自粛」といったキーワードにより、多くの企業がテレワークを実施した。

もともと昨年の4月に施行された「働き方改革法」や「東京オリンピック」を機会に、政府はテレワークの普及をめざしてきた。

それがこんな形で受け入れられるとは、誰も想像しなかっただろう。が、実際にテレワークは脚光を浴びることとなった。

多くの識者が「コロナ後」も、このテレワークは定着すると言及している。

筆者も、この流れは止められないと断言する。都市部のみならず、地方であっても、テレワークによって通勤にかかる3大コスト(お金、時間、ストレス)を限りなくゼロにできるメリットははかり知れないからだ。

とはいえ、すぐさま交通混雑が緩和されるだろうか。

心理的な抵抗があった人はもちろんのこと、通信環境や家庭の事情により、テレワークに対し抵抗感を持つ人が多く見受けられた。

そういう人たちは、緊急事態宣言解除を契機にすぐさまオフィス勤務へ切り替えるだろう。先述したように、まさに「まるで伸びきったゴムが切れるように」である。

■再び「通勤ラッシュ」が?

先述したとおり、多くの企業でテレワークは定着するはずだ。

しかし、とはいえ一部のIT企業など、進歩的な価値観を持つ経営者がトップダウンで決めない限り、ほとんどの企業は以前のように、特段事情がない人以外にはオフィス勤務を強いるはずだ。

だからテレワークが普及するといっても、段階的にである。「育休」や「時間給」という概念が徐々に普及したのと同様に、一部の希望者や事情のある者が利用できるようになるという程度であって、オフィス勤務者の半分近くがテレワーク従事者となるようなことはない。

ということは、また以前のような「通勤ラッシュ」が、大都市圏を中心に、日本全国あちこちに見られるようになる、というわけだ。とくに首都圏は顕著だろう。たとえ鉄道会社が2つ3つ線路を増やしたとしても、通勤ラッシュが減ることはないと言われているのだから。

学校や役所がはじまる時間、証券取引所の取引時間などを変更し、社会が大規模な「時差出勤」をするよう仕向けるか。企業単位でテレワーク従事者の数値目標を出してもらうか。

それぐらいしないと、結局のところ「通勤ラッシュ」を減らすことは難しい。

■働き方改革とQOL

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上の一環として「働き方改革」があったのだから、これを機会に「通い方改革」を真剣に考えてはどうか。

人生(ライフ)のどれぐらいの時間、通勤地獄に身を投じているか。今回多くの方が身をもって知ったはずだ。そして「通い方」を変えるのは意外と簡単で、意識次第でできると感じた人も多いことだろう。

「ワーク」と「ライフ」のバランスを整えることが「ワークライフバランス」であるわけだが、とくに大都市圏で仕事をする人は、「ワーク」と「ラッシュ」のバランスを考えたほうが絶対にいい。

「通勤ラッシュ」に奪われる時間コスト・ストレスコストを最大限減らし、「ワーク」にエネルギーを注げるようにしたほうが、結果的に、人それぞれのQOLも上がるのは間違いないのだから。

従業員にとっても、企業にとっても、悪いことではない。これからは、まさに「働き方改革」よりも「通い方改革」の時代であり、企業側が本腰を入れて考えるべき課題であろう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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