トンガで超大規模噴火が発生!今何が起きているのか?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「トンガで発生した大規模噴火」というテーマで動画をお送りしていきます。
2022年1月15日、170の島々からなる人口約10万人の南太平洋に浮かぶ小さな島国トンガを、大規模な火山噴火が襲いました。
近年稀に見る大規模噴火について、詳しく見ていきましょう。
●100年に1度の大規模噴火
2022年1月15日、日本時間の午後1時10分頃にトンガ諸島の火山島である「フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ」で大規模噴火が起こりました。
火山噴火の規模を示す火山爆発指数(VEI)は、現在のところ、上から3つめにあたる6に相当するとされています。
これは100年に1度起きるか起きないかの大噴火です。
火山の噴煙は直径300kmに到達し、北海道をすっぽり覆うほどの大きさを記録しています。
また、高さは海上から20kmにのぼり、成層圏に到達しています。
噴火時の爆音は2,383km離れたニュージーランドでも聞こえたそうです。
また、トンガは火山灰が降り積もり月面のような見た目になっているという情報もあります。
トンガの大規模噴火の影響は世界各国に及び、日本でも噴火が原因とされる気圧の変化や、1mを超える津波が観測されました。
トンガ諸島は日本と同じく、環太平洋造山帯に位置しています。
環太平洋造山帯では、海洋プレートの沈み込み現象により、火山活動や地震が活発になります。
自然災害科学が専門の東京工業大学教授・野上健治氏によると、
今回の火山噴火があった海域は数年前に新しい島ができるなど、海底火山が活発な地域だということです。
また、噴火があった海域には障害物がなく、高温の火山ガスや火山灰が流れ下る「火砕サージ」と呼ばれる領域が1km以上に及ぶ可能性があるため、船舶などは近づいてはならないと警鐘を鳴らしています。
欧州宇宙機関の衛星画像によると、15日のフンガ・トンガ・フンガ・ハアパイで起きた大噴火の後、海面上に露出していた陸地のほとんどの部分が消失したとされています。
火山が起きた島は285haの面積があり、皇居2.5個分の面積が噴火により消失したことからも、今回の火山噴火の規模が非常に大きかったことが分かります。
●これまでの火山噴火との比較
火山噴火の規模を表す火山爆発指数(VEI)は全部で0~8の9段階あります。
VEIは指数関数的に増加し、VEI2~8の範囲では1増加するごとに火山噴出物の量は10倍になります。
つまり、VEI5と6の間には10倍の差があるのです。
今回のトンガの火山噴火のVEIは現在のところ6に該当するとされています。
破局噴火はVEIで7以上の噴火を指すため、今回トンガで起きた噴火は破局噴火には該当しません。
それでも、VEI6レベルの噴火は、火山噴出物の量が10立方キロメートルという大規模噴火です。
10立方キロメートルは東京ドーム81万個に相当する量です。
このことから、途方もない量の火山噴出物がまき散らされたことが分かります。
日本一の高さを誇る山として名高い富士山は、江戸時代中期にあたる1707年に噴火しており、宝永大噴火として有名です。
宝永大噴火はVEI5に該当するため、今回のトンガで起きた大噴火より1ランク規模の小さい噴火です。
それでも、火山灰の量は東京ドーム約1,400個分にのぼり、関東地方に降り注いで農作物に甚大な被害を与えました。
今の東京にあたる江戸にも大量の火山灰が降り積もったとされています。
VEI5の宝永の大噴火でさえも甚大な被害をもたらしたことを考えると、今回起きたトンガの噴火の大きさが分かります。
また、最大級の噴火に分類されるVEI8に相当する噴火によって形成されたカルデラ湖の1つとして、インドネシアのトバ湖が挙げられます。
カルデラとは、火山によってできた大きな凹地のことで、トバ湖は4回の超巨大噴火によって形成されたと考えられています。
最近起きた噴火は74,000年前で、火山噴出物の量は少なくとも2,800立方キロメートルに達するような想像を絶する大噴火です。
この噴火によって巻き上げられた火山灰によって、日光は遮断され、地球の気温が平均5も低下した期間が6,000年も続いたそうです。
トバ噴火によって引き起こされた気候変動によって、現生人類の総人口が1万人にまで激減したと言われています。
現代にトバ噴火に相当するVEI8規模の噴火が起きたら、世界中に甚大な被害が出るでしょう。
しかし、VEI8レベルの噴火は1万年に1度起きるかどうかの頻度です。
実際、ここ1万年の間では1度も起きていません。
確率的には0ではないものの、私たちが生きている間にVEI8規模の火山噴火を体験する可能性は非常に低いと言ってよいでしょう。
●大噴火による気圧変化と津波
15日に起きた火山噴火によって、太平洋沿岸の国々に津波の被害をもたらしました。
現在の情報では、トンガで最大15mの津波が観測されています。
また、日本の岩手県久慈市では1.1m・鹿児島県奄美市小湊では、1.2mの津波が到達しています。
不思議なのは、一般的な火山噴火によって引き起こされる津波よりも、2時間以上早く日本の奄美大島に到達している点です。
火山噴火によって引き起こされる一般的な津波の原因は、火山の山体崩壊や火砕流の流入・爆発による水柱形成・火山性の地震などが挙げられます。
今回のトンガの噴火によって生じた津波は、先ほど挙げたような一般的な津波の原因では説明できません。
ではなぜ、今回の噴火は、異常に津波の到達が早かったりしたのでしょうか?
東京大学の火山学専門の前野深准教授は、噴火による空振によるものではないかと指摘しています。
火山噴火によって膨大な量のエネルギーが大気中に放出されると、噴火地点を中心に気圧の波が同心円状に広がります。
実際、日本では15日午後8時前の父島を初めとして、全国各地で2ヘクトパスカル程度の気圧上昇が観測されました。
これは、爆発時の衝撃によって生じた気圧の変化が太平洋を越えて日本にまで伝播したものと考えられます。
前野准教授は、大気圧の波が海の上を伝播している最中に津波を発生させ、増幅させた可能性を指摘しています。
また、津波工学が専門の東北大学教授・今村文彦氏によると、遠いところから来た津波は波が押してから返すまでの周期が長くなる傾向があるそうです。
それに対して、今回の津波は10分以下と短かったことを考慮すると、空振が影響していると推察できます。さらに湾の形状も、津波の高さに影響を与えます。
入り組んだ湾の形によって、津波をより大きくする周波数が異なるのです。
久慈市や奄美市小湊で1m越えの津波が来た原因として、空振によって影響を受けた津波の周波数と、湾固有の周波数が一致した可能性も考えられると、今村教授は指摘しています。
津波の高さや到達の速さなどの、不自然な点を考慮すると、空気中の波、すなわち大気圧の波が津波に影響を与えたとする説が有力視されています。
つまり今回の津波は山体崩壊などの通常の火山活動による要因の他、空振の影響を副次的に受けている可能性があるのです。
100年に1度の大噴火であるため、データが少なく解明されていないことも多いです。今回の噴火で研究が進み、防災や災害対策に関する科学技術が発展することに期待がかかります。