この秋、マンション暴落記事が増え始めたシンプルな理由と、その裏にあるいくつかの実情
Yahoo!ニュース個人の枠で、地価公示は「全国的に上昇」。マンションまだまだ値上がりする、の大合唱に違和感という記事を出したのは、今年3月23日のこと。その前日に出た地価公示で「地価は全国的に上昇している」とされ、マンション価格はまだまだ値上がりする、という意見が大勢を占めていた時期だ。
その中、「まだまだ上がる」に違和感を表明したのは、新築分譲マンションの販売現場を歩いて得た肌感覚からだった。
現実として、マンションはよく売れていた。価格が上がっても、販売は好調だった。しかし、コロナ禍がいつまでも続き、ロシアのウクライナ侵攻によって世界情勢に暗雲も垂れこめる中、地価やマンション価格を広範囲に押し上げ続ける熱気は感じられなかった。
かといって、「マンション価格暴落」のような極端な動きも予測できない。
希少価値が高い都心物件は高止まりするだろう。ただし、準都心(首都圏では、23区内だが山手線外側エリア)と近郊外で価格上昇の動きは弱まり、一部に価格調整が生じる状況が予測された。
それから、8ヶ月経った今、「まだまだ上がる」の声はすっかり影を潜めてしまった。「まだまだ」というから、1年や2年は上がり続けるだろう、と思っていた人は意外な思いをしているのではないか。代わって、「いよいよ暴落が始まる」と極端な意見も出だした。
「いよいよ暴落」「まもなく暴落」「暴落間近」は、2017年以来、ずっと出続けているので、いまさら驚く人はいないはずだ。
しかし、専門家と言われる人の多くが、「これから下がる」と言い始めたことの影響は少なくない。
本当に、下がる可能性があるのか、検証した。
下がるとの予測を生み出す「契約率」の低下
「これから下がる」という意見のよりどころになっているのは、契約率の低下だ。
不動産経済研究所が毎月発表する首都圏、近畿圏の新築マンション供給状況では、平均価格とともに契約率も公表される。正確にいえば「初月契約率」。マンションの販売を開始した月にどれだけの住戸が販売されて、そのうちどれだけの住戸が購入契約されたかーーその比率が「初月契約率」だ。
初月契約率は70パーセントが好不調の分岐点とされてきたのだが、今年6月以降、9月まで70パーセントを割り込み、60パーセント台の月が続いていた。
4ヶ月連続で60パーセント台の契約率が続いたことで、一気に「新築マンションが売れていない」との見方が広まった。
不動産経済研究所が毎月発表する数字の影響力は大きい。1年ほど前から盛んに出ていた「首都圏の新築マンション価格がバブル期超え」も、同研究所の数字が根拠となっていた。
たとえば、同研究所が4月18日に発表した2021年の首都圏新築マンション平均価格は6360万円。これは1990年に記録された6214万円より高くなったので、年間を通して、新築マンション価格はバブル期を超えた、というわけだ。
といっても、不動産経済研究所が「バブル期を超えた」と騒いでいるわけではない。同研究所は数字を発表しているだけ。その数字を見たウォッチャーが「それなら、バブル期超えだ」と分析したのである。
同様に、契約率に関しても不動産経済研究所は淡々と数字を公表しているだけ。数字から、好調・不調を分析するのは、やはりウォッチャーである。
その分析を真似すると、6月、7月、9月の首都圏新築マンション平均価格はバブル期の6214万円を超えた一方で、契約率は下がっていた。なので、「マンション価格が高くなった結果、売れなくなった」という見方が出てきてしまう。
しかしながら、マンション販売の現場を歩いていると、数字には表れない別の要素があることに気づく。その要素と、11月21日に不動産経済研究所が発表した最新のデータ=10月の数字を組み合わせると、異なる予測も生まれてくるのである。
10月は平均価格が上昇し、契約率は70パーセントを超えた
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