マンション価格上昇期に現れる「圧縮プラン」と、こんなの買って大丈夫なの?の声
マンション価格が上昇する時期に必ず生じる現象がある。
まず、ファミリー世帯向け3LDKに代わり、1LDKや2LDKという1人世帯向け、2人世帯向けの間取りが増えること。3LDKをつくると1億円を超えてしまうときでも、2LDKならば6500万円、1LDKだったら4800万円といった価格で販売することができる。それなら、買ってくれる人がいるだろう、と考えられるからだ。
次いで登場するのが「圧縮プラン」だ。
3LDKならば70平米以上の面積が必要なのに、60平米、55平米でつくってしまう……間取りを圧縮して狭い面積のなかに押し込んでしまう、という意味で「圧縮プラン」と呼ばれるものだ。
面積を圧縮することで販売価格が抑えられる。2LDKの価格で3LDKが購入できるので、購入者を増やす妙案と考えられがち。そのため、圧縮プランは価格上昇期のたびに登場し、じつは現在も登場している。では、その反応は?
圧縮プランの実情を解説したい。
過去には天井高を「圧縮」する禁じ手も……
「圧縮プラン」が最初に登場したのは、平成バブルの直前。マンション価格が緩やかに上がっていた昭和60年(1985年)前後だ。
そのときは前述した面積の圧縮だけでなく、別のものも圧縮された。別のものとは、ズバリ天井高である。
当時も現在も、マンションの居室天井高は2メートル40センチが基準となる。それを2メートル10センチまで下げた。建築基準法で定められている居室の天井高は2メートル10センチ以上。だから、リビングや寝室で2メートル10センチの天井高は違法建築ではない。ちなみに、昭和初期の名マンションとされる同潤会アパートも天井高は2メートル10センチだった。が、狭苦しい印象は避けがたかった。
にも関わらず採用されたのは、1フロアで30センチ程度の節約が実現できるから。その結果、本来10階建てまでしか建てられない場所で、11階建てのマンションを建設できるようになる。1フロア増えた分、1戸あたりの分譲価格を下げることができる。それで、売れ行きをよくしようとしたわけだ。
が、その評価は芳しくなかった。当然だろう。モデルルームに入った瞬間、頭上に圧迫感を感じ、天井が低いことはすぐにわかったからだ。
その結果、すぐに「こんなの買って大丈夫なの」と不安がる声が出た。当然のように売れ残りが生じ、安い価格をさらに値下げせざるを得なかった。
それだけでなく、天井の低さが広く知れわたったため、「10階建てのマンションはよいが、11階建ては避けるべき」という、わかりやすい選別法まで生まれてしまった。
天井高の圧縮は完全に失敗で、以後、行われていない。
一方で、専有面積の圧縮は……
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