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これからの教育担当者に必要な5つの能力 連載(1)企業の教育研修の目的と内容が変化

三城雄児治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

連載企画 これからの教育担当者に必要な5つの能力

(1)企業の教育研修の目的と内容が変化

今日の企業にとって、教育研修の必要性は高まっているように見える。特に、増益を果たした企業は、2011年の教育研修予算を強気で見込んでおり、教育研修は費用面から見ると増加傾向にある。しかし、この動きとは裏腹な動きも存在する。それは、教育研修業者の業績悪化である。筆者は教育研修を提供するいくつかの業者と付き合いがあるが、昨今は教育研修事業の収益がマイナス傾向にあると聞く。企業側のコスト削減への厳しい要求も相まって、価格競争も激化し、多くの教育研修業者は業績を落としている。企業にとっての教育研修の必要性は高まっているのに、一方で、教育研修業者の収益は悪化する。このパラドックスの生まれる原因を探ってみた。

まず第1に指摘できることは、教育研修をコストととらえず、将来に向けた投資としてとらえる動きである。例えば、調査結果から、企業がこれから強化を図りたい教育研修内容を読み取ると、特に多いのが中堅社員教育と新入社員教育である。これらは、知識・技能習得のための教育やコンプライアンスその他の教育よりも多くの企業が今後強化したい教育として提示している。中堅職員や新入社員教育は、将来のリーダー候補を計画的に育成するコア人材教育の一部と言える。つまり、これらの教育は投資型の教育であり、将来に向けた投資として企画されるものである。企業はいま、場当たり的に教育を施すのではなく、計画的に中長期的な視野をもって、将来のリーダーを育成していくニーズに迫られていると言えるだろう。

第2に指摘できることは、これもまた教育研修をコストととらえるのではなく、事業課題を解決するための手段ととらえる動きである。例えば、グローバル人材育成やコミュニケーション研修を実施するニーズは着実に増えてきているが、このことが調査結果からも伺える。国内市場の低迷が予測される中で、海外市場を獲得していく人材、多国籍で構成されるプロジェクトでも成果を生み出すことができる人材を育成するニーズは高まっており、それら経営課題に呼応してグローバル人材育成を進める企業も多い。また、大企業を中心にコミュニケーション不足による製品の品質問題の発生、職場風土の悪化、モチベーションの低下などに対応するため、コミュニケーション研修の実施が流行している。

つまり、企業の教育研修は「知識・教養・技能型」から「投資型」あるいは「事業課題解決型」にシフトしてきていると言えるだろう。言いかえれば、福利厚生的に設置され「あれば満足、無ければ不満」といった教育研修ではなく、経営に貢献し事業拡大に寄与するために設置され「実施することで企業競争力を高める」という特定の目的を持った研修が増えてきたということだ。

そして、教育自体に費用をかける必要性は高まったものの、それらに対応する、特的目的を持った研修を企画できていないために、研修業者の業績は悪化しているというのが、私の見方だ。

(第2回につづく)

治療家 ビジネスブレークスルー大学准教授 JIN-G創業者

早稲田大学政治経済学部卒業。銀行員、ベンチャー企業、コンサルファームを経て、JIN-G Groupを創業。グループ3社の経営をしながら、ビジネス・ブレークスルー大学准教授、タイ古式ヨガマッサージセラピストの活動に取組む。また、会社員としてコンサルファームのディレクターとしても活動し、新しい時代の働き方を自ら実践し、お客さまや学生に向け、組織変容や自己変容の支援をしている。組織/個人に対して、治療家として、東洋伝統医療の技能を活用。著書に「21世紀を勝ち抜く決め手 グローバル人材マネジメント」(日経BP社)「リーダーに強さはいらないーフォロワーを育て最高のチームをつくる」(あさ出版)がある。

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