歌がうますぎて"事件"になる 最近のK-POPアイドルたち
「チョン・ウンジ事件」
こんな言葉が先週(3月第4週)に韓国語のTwitterでトレンド入りした。
チョン・ウンジとは、2011年デビューで3月17日、19日にも日本公演を行ったばかりのガールズグループApinkのメインボーカルだ。
「歌が上手すぎて事件」 Apinkチョン・ウンジってどんな人?
「事件」って? 何かしでかしたか?
ユーザーたちのつぶやきをたどっていくと、ステージで歌っているシーンの動画が張り付けられている。ApinkのYou Tube公式チャンネル上で披露したものだ。
さては、音程を外したか?
よりディグってみると……なんと「歌がうますぎる」「原曲よりキーが1つ高いのに歌い切っている」という話だったのだ。
これより先に男性グループSEVENTEENのホシがファンミーティングで歌う姿がSNS上で「事件化」された。あまりにも歌がうますぎる、という意味だ。
これらの「事件」には共通点がある。
ソロの女性歌手ユナが2022年11月に発表し、今年になってブレイクしている曲として話題の「事件の地平線」という楽曲をカバーした点だ。
先に話題となったBTOBのウングァンやSEVENTEENのホシがTwitterでトレンド入りした際、「ホシ 事件の地平線」のうち後半部分が省略されてしまった。結果的に「ホシ 事件」が一人歩き。ファンは驚いて、そのキーワードをクリックして……拡散していったということ。
その後、チョン・ウンジの際にはファンが「確信犯」的にこれを利用した、というところか。いずれにせよ彼女の歌声はたしかに「事件レベルにすごい」。韓国では「アイドルの枠を超えたトップボーカル」としても知られる存在なのだ。2016年以降に発表されたソロ曲では「春の季節に郷里の父を思う」「ソウルでふと感じる孤独」といった“大人のテーマ”を見事に歌いきった存在だけある。
「事件」は簡単ではない……
ただしこの「事件」、解釈は一筋縄ではいかない。
日本語と韓国語の漢字の使用法の違いをしっかり理解しないと「本質」には近づけない。
「事件の地平線」はあくまでベタ直訳だ。日本語では一般的に「事象の地平面」と言われる。
これ、物理学・相対性理論の概念で「情報伝達の境界面」を意味する。英語でいうと「event horizon」。ブラックホールについて言及する際によく出てくる単語だ。
事件か、事象か。
もともと日韓問わず「事件」という漢字語には、「事柄・事項」といった意味がある。何か特別な犯罪にまつわる出来事、というニュアンスではなく、単なる「出来事」だ。韓国語での使われ方について辞書を調べていくと、物理学用語でこういった意味もある。
「時間上の特定地域で発生する事柄」
つまり厳密な意味を調べていくと「事件=事象」という使われ方もあるということ。ややこしいが。
さらに、韓国語の文脈ではこの「事件の地平線(事象の地平面)」という言葉、しばしこういった比喩で使われる。
「内部で起きた出来事の影響が、外部に及ばない境界線」
ああ難しい。
まあ要はこの歌では「好きな人の心の内に入っていけない」といった意味で使用されているのだ。「事件」は簡単にはいかない。
漢字語の解釈はさておき、「事件」についてチョン・ウンジはSNSでこうコメントを返している。
「あらっ? 『事件の地平線』のカバーのせいかな? 驚いたわ」
「みなさん、私はApinkのニューアルバムDnDの4月5日発売のために着実に一生懸命生きています。Apinkのニューアルバム、わーい」
朝鮮日報系の「朝鮮BiZ」はこのコメントを「センスある返し」としている。