Yahoo!ニュース

子どもたちの教科書に、LGBTやいろんな形の家族を! 学習指導要領パブコメ〆切り迫る

大塚玲子ライター
(写真:アフロ)

みなさんは、自分が他の人と違っているところに気付いて「自分だけが、おかしいのかな?」と悩んだことはないでしょうか。

もし子どもの頃に「そういう人も世の中にはいるんですよ」と教わっていたら、あんなに悩まずに済んだろうにと思うこと。

あるいは、友達が勇気をもって“他の人と違う何か”を打ち明けてくれたとき、もし知識を持っていたら、もっと適切に対応できたのにと思うこと。ありませんか?

もしあるなら、いまがチャンスです。

現在、文部科学省は、学習指導要領の次期改定に向けて、パブリックコメント(意見公募手続き)を実施しています。学校で子どもたちに教えておいてほしいことを要望してみてはどうでしょうか。

〆切りは2016年10月7日(金)、あと数日です。

たとえばLGBTについても、小中学校で子どもたちが正しい知識を得られるようにしておきたいことのひとつです。

「教科書にLGBTを!ネットワーク」の室井舞花さんは、次期学習指導要領で“多様な性のあり方”を踏まえたカリキュラムを組むよう、パブコメを送ろうというキャンペーンを呼びかけています。

室井さんには以前、こんな経験があったそうです。

「私は中学生の頃、“自分は女の人を好きかもしれない”と初めて気付きました。不安や混乱を感じていたまさにその時期に、保健体育の教科書にこんな記述を見つけたのです。

“思春期になると、誰もが異性への関心が高まるようになります”

これを読んだとき、私は頭の中が真っ白になりました。床に叩きつけられたような気持ちです。当時はもちろん“教科書には正しいことが書いてある”と思っていますから、“異性ではなく同性を好きになる私は、間違っているんだ”と思ってしまい、大きなショックを受けたのです。

この記述は2016年の今現在も、学習指導要領や、何冊かの教科書に残っています。

LGBTの人たちは、異性愛者の人たちに比べて自己肯定感を持ちづらく、自殺率が高い傾向があるのですが、もし子どものときに使う教科書にセクシュアルマイノリティのことがちゃんと書かれていたら、かなり改善すると思います。

また活動をしていると、よく当事者以外の人たちからも“もっと早く、LGBTについてちゃんと知っていたかった”ということを言われます。

『昔、友達からLGBTであることをカミングアウトされたとき、もし自分がちゃんとした知識を持っていたら、もっと全然違った対応ができたのに……』と後悔している人が、少なからずいるのです。

ですからこれは、LGBT当事者だけでなく、異性愛者の人たちにとっても、とても必要なことだと思います」

現在、多くのLGBT当事者団体がこのパブコメキャンペーンに加わっていますが、そのなかの一つ、子どもを養育するLGBTネットワーク「にじいろかぞく」代表の小野春さんにも、お話を聞かせてもらいました。小野さんはこう語ります。

「当事者にとって、子どものときからLGBTについて正しい知識と肯定的な感覚を持っておくことは、“人生をどう設計するか”においても、ものすごく重要なことなんです。

わたしは中学生の頃から、自分が同性を好きになるセクシュアリティであることに気付き始めていたのですが、自分の将来像をまったく思い描くことができませんでした。

そのため若い頃は、自分の時間をうまく将来に投資することができなかったし、いざ社会に出るときも、すごく怖く感じていました。

もし小・中学校の時の教科書に、LGBTや同性カップルの存在について書かれていて、“同性同士でつがう人生もアリだ”ということを知っていたら、私ももっとしっかり将来像を描けたろうし、それによって、もっとシンプルな人生を歩めていたんじゃないかと思います。

LGBTのことだけでありません。いろんな形の家族があることも、教科書に書かれていたらいいと思います。パートナーと生きる人生もあれば、ひとりで生きる人生もある。子どもを持つ人生もあれば、持たない人生もある。継子や養子、里子など、自分とは血のつながらない子どもを育てる人生もある。

そういったことまで学校で知っておけたら、将来、“こういう人生を送らなければならない”とか“こういう家族でなければならない”という思いに捉われて悩み苦しむ人を、相当減らせるんじゃないかと思います」

筆者もこの考えに深く同意します。いろんな人生や、いろんな家族のあり方が肯定される世の中になれば、子どもも大人もたくさんの人たちが、いまよりもずっと生きやすくなることでしょう。

学習指導要領の改訂は、ほぼ10年ごとに行われてきています。今回を逃すと、また10年間待たなければなりません

ぜひみなさんも7日(金)までに、パブコメを送ってはいかがでしょうか。そしてパブコメを書いた方は、ぜひ「#パブコメ書いた」というハッシュタグでツイートを。

なお、「教科書にLGBTを!ネットワーク」では、今回のパブコメキャンペーンが終了したあとも、今年度いっぱい、議員への働きかけなど様々な活動を継続していく予定だそうです。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

大塚玲子の最近の記事