日本、中国など海外の新型コロナウイルス変異株の状況は?アメリカで急激に広がるXBB.1.5の特徴は?
2023年1月現在、日本は第8波の真っ只中にあり、感染者も増え続けています。
新しい変異株が流入することで、さらに感染者の増加につながる可能性があります。
現在の日本や海外での変異株の状況についてご紹介します。
日本では現在もBA.5が主流
オミクロン株が世界に現れたのは2021年11月ですが、約1年経過した現在もオミクロン株の亜系統が99.9%を占めており、オミクロン株以外の系統の変異株はほとんど見つかっていません。
日本では、第6波が起こった2022年1月頃からオミクロン株BA.1が主流となり、その後BA.2に置き換わり、第7波の初期からBA.5に置き換わっています。今も日本ではBA.5が半分以上を占めているという状況です。
現在、日本でもBQ.1、BF.7、BN.1などオミクロン株の別の亜系統が増えてきていますが、これまでのBA.1、BA.2、BA.5の急激な広がり方と比べると非常に緩徐な増え方になっています。
このことは、現在少しずつ広がっているこれらの変異株が、BA.5と比べて極端に感染力や免疫逃避が強いわけではないことを示唆しています。
中国では現時点では新たな変異株の報告はない
爆発的な感染者の増加が報告されている中国ですが、1月5日時点で中国で検出されたウイルス遺伝子の情報がGISAIDという新型コロナウイルスのデータベースに登録されました。
123株(上海69、北京22、四川省14、福建省12、広東省6)のウイルスの遺伝子情報の内訳を見ると、BF.7やBA5.2などすでに中国以外でも報告されている変異株ばかりであり、現時点で中国で未知の変異株が広がっているということはなさそうです。
しかし、1日に100万人を超える感染者が出ているとも言われる中国で、今後新たな変異株が出現する可能性は十分にあり、日本の検疫でも1日100名近くの中国からの入国者が陽性になっていることを考えると、中国における変異株の状況については引き続き注視が必要と考えられます。
アメリカではXBB.1.5が増加
一方、アメリカではBA.5から徐々にBQ.1系統(BQ.1/BQ.1.1)が主流になってきていましたが、2022年12月からXBB.1.5という組換え体が急激に増加してきています。
特にアメリカの東側の地域では、すでにXBB.1.5が半分以上を占めている地域も出てきています。
Xで始まる変異株は組換え体を表しており、XBBはBJ.1とBM.1.1.1の組換え体です。
組換え体は、2種類以上の変異株に同時に感染することで、感染者の体内でそれらの遺伝子が混ざり合って発生するものです。
新型コロナウイルスはヒトだけでなく動物にも感染することがあるため、動物の体内で組み換えが起こることもあります。
複数の変異株が同時に流行している状況下における新型コロナウイルスの組換えは珍しいことではなく、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、いくつかの組換え体が確認されており、これまでもデルタ株とオミクロン株との組換え体であるXD、XF(通称デルタクロン)やBA.1とBA.2との組換え体であるXEなどがありました。
しかし、これまではこれらの組換え体が他の変異株よりも感染力が強く拡大したという事例はありませんでした。
しかし、このXBBはシンガポールで主流となり、そのXBBから派生したXBB.1.5がアメリカで拡大しようとしています。
XBB.1.5は免疫逃避が強く、ACE2受容体への親和性が高い
このXBB.1.5という組換え体は、過去の感染やワクチン接種によって得られる免疫から逃がれる性質(免疫逃避)が強いという特徴があります。
そもそも免疫逃避はオミクロン株全体に共通する特徴ですが、XBB系統は特にその傾向が顕著であることが分かっています。
つまり、これまでのオミクロン株と比べても、過去に感染した人やワクチンを接種した人も感染しうるということになり、従来のオミクロン株よりも感染者が増えることが懸念されます。
また、XBB.1.5は免疫逃避だけでなく、ACE2受容体への結合力が強いことが示されています。
ACE2受容体とは、新型コロナウイルスの侵入門戸であるヒトの細胞表面に発現しているものであり、新型コロナウイルスのスパイク蛋白と呼ばれる構造物が結合することで、細胞内にウイルスが感染します。
XBB.1.5がACE2受容体への結合力が強いという実験室での研究結果は、それだけ感染力が強くなっていることを示唆しています。
XBB.1.5の重症度は?
では実際に、このXBB.1.5が広がると感染者や重症者は増えるのでしょうか。
例えば、アメリカでXBB.1.5が最も広がっている州の一つであるニューヨーク州では、現時点では感染者数は緩やかな上昇にとどまっていますが、その一方、入院患者数が上昇してきており不気味な印象を受けます。
同じくXBB.1.5が広がっているアメリカの東海岸側のマサチューセッツ州、コネチカット州などでも同様の傾向を示しています。
これは、XBB.1.5の重症度が高いことを示している可能性もありますが、世界的に新型コロナの感染者数は正確ではなくなってきていますので、単に実際の感染者数を正確に反映していない可能性も十分考えられます。
XBB.1.5の重症度については、今後のデータの集積を待つ必要があります。
私たちにできることは?
日本では、1月4日時点での公開情報ではXBB.1.5は検出されていません。
現在日本の検疫体制は以前よりも緩和しており、海外から日本国内に新たな変異株が持ち込まれるリスクはこれまで以上に高くなっています。
今後国内で新たな変異株が増加していかないか、ゲノムサーベイランスで監視する必要があります。
とはいえ、私達一人ひとりができることに大きな変わりはありません。
この3年間で身についた基本的な感染対策をしっかりと続けていきましょう。
また、XBB.1.5も含め世界中で広がっている変異株は全てオミクロン株の亜系統であることから、効果の程度に差はあると思われるものの、オミクロン株対応ワクチンによる感染予防効果は従来のmRNAワクチンよりも高いと考えられます(XBBに対してはオミクロン株対応ワクチンの接種によって中和抗体の上昇が得られたと報告されています)。
ぜひワクチン接種をご検討ください。