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3年後に実った!食品ロス削減推進法施行の日に宮古島市社会福祉協議会が始めたフードバンク「んまんま」

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
宮古島市社会福祉協議会の漢那林氏(左)と松下智美氏(右)office3.11撮影

日本初となる食品ロス削減のための法律「食品ロス削減推進法」が施行された2019年10月1日。沖縄・宮古島市の社会福祉協議会は、フードバンク「んまんま」を始めた。

「フードバンク」とは、食品ロスを受け取り、必要な方へとつなぐ活動のこと、もしくはその活動をする組織を指す。「んまんま」とは、宮古島の言葉で「おいしい」を意味するという。

沖縄・宮古島市社会福祉協議会が立ち上げたフードバンク「んまんま」(筆者撮影)
沖縄・宮古島市社会福祉協議会が立ち上げたフードバンク「んまんま」(筆者撮影)

2019年10月20日付の宮古毎日新聞は、フードバンク「んまんま」に初めて企業の寄付食品が提供されたことを取り上げていた。

宮古島訪問予定があり、2019年10月21日、宮古毎日新聞の記事に掲載されていた、宮古島市社会福祉協議会を訪問させて頂いた。

宮古島市社会福祉協議会(筆者撮影)
宮古島市社会福祉協議会(筆者撮影)

3年前の2016年10月に宮古島で講演

面会は、宮古毎日新聞に掲載されていた、地域福祉課の課長、漢那林(かんな・はやし)さんと、地域福祉係の松下智美(まつした・ともみ)さんが対応して下さった。

筆者は、ちょうど3年前の2016年10月21日、宮古島市の平良港(ひららこう)ターミナルビルで、フードバンクと食品ロスの講演をしていた。

2016年10月21日に宮古島市の平良港ターミナルビル大研修室で開催された、フードバンクと食品ロスのシンポジウム(筆者撮影)
2016年10月21日に宮古島市の平良港ターミナルビル大研修室で開催された、フードバンクと食品ロスのシンポジウム(筆者撮影)

フードバンクを推進し、各地に根付かせるための事業は、正式名称が長い。

「農林水産省 平成28年度 農産漁村6次産業化対策事業 食品ロス削減国民運動展開事業 フードバンク活動等の推進事業」。

2016年10月21日開催のシンポジウムを告知する当時の新聞(筆者撮影)
2016年10月21日開催のシンポジウムを告知する当時の新聞(筆者撮影)

沖縄県那覇市のフードバンク、セカンドハーベスト沖縄が主催するシンポジウムで講師を務めた。対象は、石垣島と宮古島。

2016年10月21日、シンポジウム会場近くの平良港に停まっていた船(筆者撮影)
2016年10月21日、シンポジウム会場近くの平良港に停まっていた船(筆者撮影)

2016年当時の講演は、参加者も少なく、「本当にこれで効果があるのだろうか・・・」と、こころもとない思いでいっぱいだった。だが、こうして3年経ち、フードバンクがスタートしたことを知った。今やっていることが、すぐに形に現れなくても、いつか形になることもあるのだと、嬉しくなった。

2016年10月21日、宮古島市の平良港ターミナルビル会場に設置されたシンポジウムの告知幕(筆者撮影)
2016年10月21日、宮古島市の平良港ターミナルビル会場に設置されたシンポジウムの告知幕(筆者撮影)

宮古島特有の貧困が存在

沖縄は、こどもの貧困率が29.9%で、全国平均の2.2倍である(内閣府資料より)。特に、沖縄本島と比べて、離島はアクセスが限られる。

松下さんによれば、宮古島には、島特有の貧困の形があるという。表現するのは難しいようだが、特に、ひとり親家庭や単身世帯で困窮の様子が見られる。

フードバンク「んまんま」について説明してくださる漢那林課長(右)と松下智美さん(左)(株式会社office 3.11撮影)
フードバンク「んまんま」について説明してくださる漢那林課長(右)と松下智美さん(左)(株式会社office 3.11撮影)

宮古島の人口は、およそ約5万5千人(宮古島市公式サイト)。

しかし、観光客や、旅行に来てそのまま住みついた人、住民票を宮古島へ移さずに暮らしている人などを加えると、「人口10万人くらい」とも言われるとのこと。中には「旅行に来て、お金がなくなってしまい、食べるものがない」という相談もあるのだそうだ。

宮古島の近く、下地島の海(筆者撮影)
宮古島の近く、下地島の海(筆者撮影)

食材はフードドライブや災害備蓄品でまかなう

今回、フードドライブ事業を立ち上げたのは、宮古島市の社会福祉協議会。現在の食料供給源は、次の4点。

1、 フードドライブ(食品持ち寄り活動)の開催

2、 宮古島市から、期限の近づいた災害備蓄食料の譲り受け

3、 社会福祉協議会のホームページやチラシ、新聞による周知

4、 商店やショッピングセンターへの協力依頼

平良港(ひららこう)(筆者撮影)
平良港(ひららこう)(筆者撮影)

今やっていることは将来形になるポテンシャル(潜在力)がある

2019年10月16日に開催され、筆者が登壇した、朝日地球会議2019では、会場にいらっしゃる10代の方から「食品ロス、今でこそ流行っているけど、一時的なものに終わってしまうのでは?」という質問を頂いた。

土井善晴氏、當具伸一氏と登壇した「朝日地球会議2019」(村岡悟氏撮影)
土井善晴氏、當具伸一氏と登壇した「朝日地球会議2019」(村岡悟氏撮影)

筆者は、「一般の方から見れば、今、急に食品ロスが流行っているように見えるかもしれない。でも、20年前から食品ロスの研究に取り組んでいる小林富雄先生のような研究者の方もいる。昭和55年から家庭ごみの食品ロスの調査を続けている京都大学のような組織もある。今やっていることがすぐに成果に結びつくわけではない。長年の蓄積が、今、おもてに出てきているのだから、すぐにしぼむことはない」といった趣旨を答えさせて頂いた。

土井善晴氏、當具伸一氏と登壇した「朝日地球会議2019」(村岡悟氏撮影)
土井善晴氏、當具伸一氏と登壇した「朝日地球会議2019」(村岡悟氏撮影)

宮古島市の事例は、3年前の講演が、今、まさに成果につながったとも言える。

廃棄物資源循環学会のシンポジウムで京都市の家庭ごみに含まれていた食品ロスについて発表する京都大学の浅利美鈴准教授(筆者撮影)
廃棄物資源循環学会のシンポジウムで京都市の家庭ごみに含まれていた食品ロスについて発表する京都大学の浅利美鈴准教授(筆者撮影)

フードバンク「んまんま」への食品寄付募集

フードバンク「んまんま」が扱う食品は、常温保存ができて、賞味期限が残り1ヶ月以上あるものに限っている。仮に賞味期限が近づいているものがある場合は、こども食堂や福祉施設へ寄付し、すぐ食べていただくそうだ。

フードバンク「んまんま」の問い合わせは、宮古島市社会福祉協議会、地域福祉課 地域福祉係の松下智美様まで(電話 0980-72-3193、FAX 0980-73-0893、住所 906-0106 沖縄県宮古島市平良字久貝706番地の1 平良老人福祉センター内)。

参考情報

宮古島市社会福祉協議会「フードバンク事業をはじめました」(2019年10月23日)

2019年10月21日、宮古島市社会福祉協議会の課長、漢那林様(右)と松下智美様(真ん中)と筆者(左)(株式会社office 3.11撮影)
2019年10月21日、宮古島市社会福祉協議会の課長、漢那林様(右)と松下智美様(真ん中)と筆者(左)(株式会社office 3.11撮影)
食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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