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仕事を失い、社会との接点を喪失したわが子との関係性をつなぐ、親の「お願い」

工藤啓認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

現在、若年無業者がいかにして公的、民間支援機関につながるのかについての調査を行っている。規模的には、若者665名(男性440名、助成225名)、保護者288名(男性228名、助成60名)と大きくはないが、実際に支援機関に来所されている方々にアンケート調査を行った。エリアとしては、もっとも少ない東北でも45名と比較的広くアンケートが集まった。

調査結果のまとめに入る段階ではあるが、興味深いデータがあった。調査では、6ヶ月、1年、3年、6年、6年以上の無業期間別でさまざまな項目について若者、保護者双方より回答を得ているが、ほとんどの場合、長期になればなるほど関係性や状況は悪くなる(良くはならない)のだが、無業期間にほとんど影響を受けず、かつ、若者と保護者が共にポジティブな回答をしている項目があった。

それが、「家事の依頼」だ。保護者は「家事を依頼する側」であり、若者は「家事を依頼される側」として、双方が共に「よかった」と回答している。

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(保護者の回答)

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(若者の回答:「依頼する」とあるが「依頼される」の意味)

保護者側のデータを見ると、掃除や買い物、修繕等の家事を依頼して「良かった」との回答は50%を超えており、無業期間が6年を超えても57.6%となっている。一方、「家事を依頼される」若者は、依頼をされて「良かった」との回答は65%を超えており、無業となって1年以内は70%前後と非常に高い。

保護者から家事を依頼された場合、嬉しいと感じるか、面倒くさいと感じるかは個人差があるが、65%以上の若者が「良かった」と感じており、20%以上が依頼をされておらず、保護者からの家事依頼にポジティブな回答をする割合はもう少し高くなると推察される。一方、「良くなかった」との回答は6%から15%程度と低く、長期に渡って仕事が見つからず、探すこともあきらめかけてしまっているとき、普段であれば面倒だと感じる、保護者からの家事依頼は、むしろ、ありがたいものであると思われている。

そうであれば、わが子が無業状態になったとき、保護者は家事を依頼すればいいことになるかもしれないが、13%から25.7%のレンジで、保護者はわが子に家事を依頼していない。現場の雑感ではあるが、仕事を探しているが決まらない。決まらないことが続くことで、探せなくなってしまっている子どもに、保護者はどう声をかけていいのかわからなくなってしまうことがある。何かのきっかけで会話がこじれたりすると、特に母親は、わが子が声を荒げられたりすることを恐れたり、傷つけたくない気持ちから、「はれもの」になってしまうことがある。

今回の調査では、さまざまな支援(機関)へのアクセスのきっかけが、保護者からの情報提供であった回答が40%(無業期間6年以上のみ29.1%)に上った。しかし、保護者から子どもへの情報提供には、信頼関係やスムーズなコミュニケーションの前提が必要になる。関係性なき助言は素直に受け取れない。つまり、日常の関係性/関わりが情報提供および次の行動に影響を与える。その際に何をしたらいいのか。調査結果から、複数の可能性は示唆されているが、大きな発見は保護者が「家事を依頼する」という行為が、無業期間に関わらず、「家事を依頼された」わが子にとって良かったものとして認識されていることだ。

育て上げネットでは、母親のための支援プログラム「結(ゆい)」を運営しているが、そのケース会議などでよく話されている「方法論」ではあったが、改めて、「依頼する」「依頼される」という行為が、家族の関係性に好影響を与えていることが裏付けられたと考えている。

認定特定非営利活動法人育て上げネット 理事長

1977年、東京都生まれ。成城大学中退後、渡米。Bellevue Community Colleage卒業。「すべての若者が社会的所属を獲得し、働くと働き続けるを実現できる社会」を目指し、2004年NPO法人育て上げネット設立、現在に至る。内閣府、厚労省、文科省など委員歴任。著書に『NPOで働く』(東洋経済新報社)、『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『若年無業者白書-その実態と社会経済構造分析』(バリューブックス)『無業社会-働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)など。

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