すーっと雪のように溶ける滑らでひんやり食感の「紫雲石」大納言小豆の甘納豆の風味が凝縮された風味豊か
まだ冷蔵庫が無かった時代より息づいてきた和菓子の文化。今でこそ食べる直前に冷蔵庫で冷やして、というディレクションが付随してくる場合もありますが、昔はそうもいきませんでした。
しかし、暑い日でも体が火照るような日でも先人たちが編み出した知恵と工夫により、五感を使って涼を感じられる和菓子も誕生しています。
1870年創業、お盆に開催される阿波踊りでも有名な徳島県にて本店を構える「小男鹿本舗冨士屋」さん。小男鹿と書いて「さおしか」と読みます。若い牡鹿、または若い男性を示すこともあるようです。比較的大きな都市の百貨店などでも銘菓である蒸し菓子「小男鹿」が販売されていますが、あえてそちらではなくむしろ今の季節にも相応しい半生菓子があるのです。今回は小男鹿本舗冨士屋さんの「紫雲石」をご紹介。
ちょっと渋めな包装であるがゆえに若い世代の方はとつきにくいかもしれませんが、個人的にはぜひおすすめしたい和菓子。
と申しますのも、紫雲石はすり琥珀と申しまして、近年若い世代の間でもかなり普及しはじめた琥珀糖の仲間。琥珀糖は透明度を活かしたまま凝固させますが、すり琥珀は途中で攪拌して乳白色に仕上げたもの。琥珀糖と同様しゃりっとした食感ではありますが、よりきめ細やかで柔らかいのも特徴です。
上質なお砂糖に寒天を溶かし、なんと大納言小豆の甘納豆を加えているのです!確かにちらほらと千代紙の模様のようにちらばる小豆の皮は確認できますが、あんこを溶かしたのではと思う方も沢山いらっしゃるかと思います。
表面の薄氷のように繊細なしゃりっとした微かな食感と、さーっと細雪が口の中で溶けていくような心地よさと、お砂糖ならではの穏やかな冷たさに目を閉じれば、したたかで風味豊かな小豆の味わいが舌の上から徐々に染みわたっていきます。洗練された甘さをじっくり味わった後は、珈琲や抹茶をほんの少しだけ口に含み、じっくりと余韻にひたりたくなるようなそんな御菓子。
シンプルな食材のみで構成されておりながら、冷たい御菓子ではなくとも体の熱をほんの少し取り除いてくれるような紫雲石。ぜひ、ちょっと拘りのアイスコーヒーやお茶と一緒に優雅なお茶の時間のお供になさってみては。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<小男鹿本舗冨士屋>
公式サイト(外部リンク)
徳島県徳島市南二軒屋町1-1-18
0886231118
8時20分~17時30分