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防御率3点台の先発投手をトレードで放出したのは、ワールドシリーズ連覇をあきらめたからなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・ロレンゼン Jul 27, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月29日、テキサス・レンジャーズは、先発投手のマイケル・ロレンゼンをカンザスシティ・ロイヤルズへ放出し、リリーフ投手のウォルター・ペニントンを獲得した。

 昨年、レンジャーズは、初のワールドシリーズ優勝を飾った。今シーズンは、ここまで51勝55敗と負け越し、ア・リーグ西地区3位に位置している。首位のヒューストン・アストロズとの差は4.5ゲーム。ワイルドカードの3番手、ロイヤルズとの差は6.0ゲームだ。

 レンジャーズは、ワールドシリーズ連覇をあきらめ、ロレンゼンを手放したようにも見える。

 今シーズン、ロレンゼンは、先発18登板とリリーフ1登板で計101.2イニングを投げ、防御率3.81を記録している。先発登板に限っても、防御率は3点台。97.2イニングで防御率3.87だ。

 今オフ、ロレンゼンは、FAになる。ロレンゼンと交換にレンジャーズが得たペニントンは、今月5日にメジャーデビューした。

 もっとも、ロレンゼンの放出=レンジャーズの白旗、ではないかもしれない。

 現在のローテーションに並んでいるのは、ネイサン・イオバルディマックス・シャーザーアンドルー・ヒーニーデイン・ダニングの4人だ。トミー・ジョン手術からの復帰をめざしているタイラー・マーリージェイコブ・デグロームに、今月下旬に右の股関節を痛めたジョン・グレイのうち、マーリーは、復帰が近づいている。あとの2人も、うまくいけば、来月中に戻ってくるだろう。

 レンジャーズにとって、ロレンゼンは、余剰の先発投手となる可能性があった。ロレンゼンの奪三振率は6.64と低く、与四球率は4.25と高い。FIPは5.15だ。今シーズン、90イニング以上を投げている97人のなかに、FIP5.00以上は7人しかいない。FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。

 一方、移籍直前のペニントンは、ロイヤルズのAAAにいた。レンジャーズでも、まずはAAAで投げることになりそうだ。けれども、左投手という点を踏まえると、早々に昇格してもおかしくない。

 今シーズンは、ロイヤルズ傘下のAAAで59.2イニングを投げ、奪三振率11.92と与四球率3.02、防御率2.26を記録している。ちなみに、メジャーリーグ初登板――現時点では唯一の登板――は、2人に対して計8球を投げ、1人目から三振を奪い、2人目は内野ゴロに仕留めた。

 なお、ロイヤルズでロレンゼンがどう起用されるのかは、まだ不透明だ。ロレンゼンの通算361登板は、ブルペンからの登板が4分の3以上を占める。今シーズンは、7月27日の先発登板で、初回を終わらせることができずにマウンドを降り、その翌日、グレイがウォーム・アップ中に負傷降板となり、リリーバーが打ち込まれると、自ら志願してモップ・アップ(敗戦処理)を務め、5回裏から8回裏まで4イニングを投げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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