Yahoo!ニュース

市民団体によるテレビ朝日HDへの株主提案。「ワイドショーで幻冬舎の本の宣伝・広告があった」と疑義呈す

赤澤竜也作家 編集者
2月5日、外国特派員協会で会見する田中優子氏、前川喜平氏(杉浦ひとみ弁護士撮影)

「テレビジャーナリズムの萎縮を防ぐため、テレビ局の株式を買い取り、株主総会で建設的な提案を行おう」

田中優子法政大学名誉教授・前総長と前川喜平元文部科学省事務次官が共同代表を務める『テレビ輝け!市民ネットワーク』はこのような目的で立ち上がった。

このほどテレビ朝日HDの株主提案権を得るだけの株式を取得したため、4月8日(月曜日)午後1時に本社を訪れ議案を提出する。

そのなかで子会社のテレビ朝日が放映したワイドショーにおいて「幻冬舎が発刊する書籍の宣伝、広告部分があると視聴者に疑い、疑問を抱かせる番組が報道された」と指摘していることが明らかになった。

なお幻冬舎の見城徹社長は2003年からテレビ朝日の番組審議会委員を、2014年からは番組審議会委員長を務めている。

危機感を持つ賛同人たちがテレビ朝日HD株を購入

会社法は、株主300個(300単元ともいう)が集まれば、株主総会において株主提案ができると定めている。

事前に会社側へ株主提案を申し入れると、株主総会において議題として扱われる。総会でその議案を提案者側が説明し、全株主の賛否を聞くことが義務付けられているのである。

株主提案のためには株式を6ヵ月保有していなくてはならず、また総会の8週間前に提案を行う必要がある。『テレビ輝け!市民ネットワーク』の賛同人たちは昨年半ばより手分けしてテレビ朝日HD株を購入し、今般、委任状を添えて議案を提出するものだ。

同ネットワークは「報道機関としてのテレビに本来の役割を果たさせる」という目標を掲げている。第1号議案は、もっとも重視しているメディアの権力監視に関するもので、「子会社の制作番組を含め報道番組などについて政治的な権力を持つ者からの圧力、介入により報道機関の公正報道を保ち難い疑いのある事例」についての提案であるという。

第2号議案は子会社テレビ朝日が過去に放映した2本のワイドショーについて取り上げる模様。

日本民間放送連盟の定めた放送基準には「報道活動は市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づき、公正でなければならない」とある。

まるでひとつの会社の商品の広告・宣伝ではないかと思わせるような報道は放送倫理に反することになる。

また2023年10月1日より改正景品表示法が施行され、実際は広告であるにもかかわらず、報道を装うステルスマーケティングが違法となった。

消費者庁が広告と報道との区別を明確にするよう指導しているにもかかわらず、視聴者に疑念を抱かせるような番組が作られたのではないかというのである。

筆者は第2号議案が指摘する番組の当該コーナーを視聴した。

いやはや、本当に驚いた。テレビショッピング顔負けの露骨な宣伝のオンパレードだという感想を持つに至る。迷わずBPOの放送倫理検証委員会へ審議・審査入りするよう求める意見書を郵送した。

なお『テレビ輝け!市民ネットワーク』は4月8日午後2時より記者会見を行い、詳細について説明の予定。フリー記者の参加も歓迎するという。

『テレビ輝け!市民ネットワーク』事務局提供
『テレビ輝け!市民ネットワーク』事務局提供

作家 編集者

大阪府出身。慶應義塾大学文学部卒業後、公益法人勤務、進学塾講師、信用金庫営業マン、飲食店経営、トラック運転手、週刊誌記者などに従事。著書としてノンフィクションに「国策不捜査『森友事件』の全貌」(文藝春秋・籠池泰典氏との共著)「銀行員だった父と偽装請負だった僕」(ダイヤモンド社)、「内川家。」(飛鳥新社)、「サッカー日本代表の少年時代」(PHP研究所・共著)、小説では「吹部!」「白球ガールズ」「まぁちんぐ! 吹部!#2」(KADOKAWA)など。編集者として山岸忍氏の「負けへんで! 東証一部上場企業社長VS地検特捜部」(文藝春秋)の企画・構成を担当。日本文藝家協会会員。

赤澤竜也の最近の記事