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夏休みに家族で旅行に行きます。運動部の練習を休んでもいいですか。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:アフロ)

 あと10日あまりで夏休みが始まる。

 夏休み中に、家族旅行のため、運動部の練習を休んでもいいのか。休ませないのは、ブラック部活動なのか。ツイッターでは、家族旅行で練習を休むと告げると、顧問から、次の試合には出場させない、という脅しを受けるという書き込みを見かけたが…。

 多くの運動部では、夏休みに入る前に活動計画を立てる。そのときに、前もって、家族旅行などの個人の都合を理由に、何日までなら練習を休んでよいのかを決めておくことを提案したい。顧問が大まかな筋道を示し、子どもたちで合意形成できたら理想的だ。それを明文化し、子ども、顧問、保護者のみんなが分かるようにしておけばいい。

 (暑い期間のトレーニングには、熱中症対策や、疲労回復期間を考慮した練習計画が望まれるのは言うまでもない。チーム全体の休養日も確保しなければいけない)

 たとえば、個人の都合で3日間は休んでもよい。しかし、4日以上休むときには、ずっと練習に参加しているメンバーの試合出場を優先し、1試合はスタメンで試合に出場することはできない、などだ。

 1試合のスタメンから外れるくらいなら、家族旅行で4−5日休んでもいいと考える子どももいるだろうし、1試合でもスタメンから外れたくないので、家族旅行は3日以内にしてほしいと、親に頼む子どももいるだろう。親から自立しようとする時期でもあり、中高生の誰もが、運動部活動よりも家族旅行を優先したいと考えているわけでもないはずだ。

 夏休みに自分は何をしたいか、という優先順位をそれぞれに考えるトレーニングにもなる。それに、家庭の事情はさまざまだ。家族で出かける予定のない家もある。弟や妹の世話を中学生や高校生の子どもに頼みたいときもある。家族旅行、家の手伝い、受験勉強、どこからどこまでを個人の都合に含めるのかも話し合わなければならない。

 先に挙げたのはあくまでも喩え話である。一定期間以上休むことのペナルティは、試合の起用と絡める必要はない。事前に連絡する必要はあるが、何日休んでも、何のペナルティーもない、といったルールがあってもよいのではないか。

 ポイントは、前もって運動部内のルールを決めておくことだと思う。どのような理由なら休んでもよいのか。家族旅行や友達と遊びに行くといった理由の場合は、何日まで休んでもよいのか。

 最悪なのは、権力を持つ側の後出しジャンケンだろう。子どもが顧問に対し「家族旅行のため、練習を休みたい」と相談したとき、選手起用の権利を持つ顧問が「そういう理由で休むのなら、試合には出場させない」と脅して、部員の行動をコントロールしようとする。それは、大人側の汚い手口ではないだろうか。

 前もってルールを決めておくことは、学校生活や社会生活でも有効だ。ミスや規則違反をしたときに、どんな制裁を受けるのか分からないときには、不安にさいなまれる。(家族旅行は規則違反ではないだろうが) しかし、どのようなペナルティーがあるかがあらかじめ決まっているときには、見通しがきかないゆえの不安が軽減され、次にやるべきことへと行動を起こせるからだ。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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