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ジェイムズウェッブが発見!初期宇宙にしか存在しない「正体不明の赤い点」がヤバイ

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「JWSTの深宇宙探査で判明した無数の未知の天体の謎」というテーマで解説していきます。

深宇宙探査の分野において目覚ましい成果をあげているジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope, JWST)は、初期宇宙の至る所に存在する未知の天体「LRD」を幾つも発見しました。

また2024年6月に発表された最新の研究では、LRDの正体は大きな謎に包まれていることが判明しました。

●LRDとは?

LRDは(Little Red Dots)の略で、「小さく赤い点」という意味です。

JWSTの観測で存在が判明した、その名の通り赤く小さな光源です。

LRDはビッグバンから数億年~20億年程度の、初期の宇宙にしか見られません。

そして非常に数が多く、JWSTの観測で得られた画像データのほとんどに写り込んでいるほどです。

その赤さは、この光が現在の地球にやってくるまでの長い間に宇宙膨張の影響で波長が伸びたこと(赤方偏移)によるものでもありますが、それだけではなく、大量の塵が存在するなどの原因で、最初から長波長の光を大量に放出していた可能性もありますが、その詳細な原因は不明です。

そして典型的なLRDの半径は500光年以下で、中には150光年に満たないものもあります。

これは天の川銀河の100分の1以下の大きさに過ぎず、輝きの割に非常にコンパクトであると言えます。

●LRDの正体の謎

2024年6月に発表された最新の研究では、LRDの赤い輝きの正体は大きな謎に包まれていることが判明しました。

その正体について2つの仮説があるものの、それぞれの解釈に問題が含まれているのです。

一つ目の仮説は、中心部に超巨大ブラックホールを抱えた銀河であるというもの、もう一つの仮説は非常に狭い範囲内に膨大な数の星を生み出す極端に活発な星形成銀河であるというもので、1つの銀河内に超大質量ブラックホールと極端に活発な星形成領域の両方存在する可能性もあります。

○巨大ブラックホール説

この説には、これを支持する観測的な根拠があります。

ブラックホールの降着円盤の周囲には、降着円盤から放たれた紫外線で電離した水素のガス(広輝線領域)が存在し、その周囲には巨大なドーナツ状の分子雲が存在すると考えられています。

ドーナツ状の分子雲の内側にある広輝線領域からは、波長が比較的広範囲にわたる特有の電磁波が放たれます。これはブラックホールの周囲の構造だけに見られる、特有の信号です。

LRDからやってきた電磁波の波長ごとの強度(スペクトル)を調べたとき、広輝線領域が放つとみられる特有の信号が浮かび上がったため、LRDには活動的な超大質量ブラックホールが存在すると予想されます。

しかしこの解釈にはいくつか問題があり、まずX線が検出されていないことが挙げられます。

ブラックホールに落ちる物質が生み出す電磁波のかなりの部分は、X線の形でやってきます。

したがってLRDの正体が超大質量ブラックホールであれば、X線でも観測可能なはずです。

しかしこれまでに発見されたLRDのほとんどは、X線放射の兆候を示さないのです。

また、それが属する銀河に対する中心ブラックホールの質量比が大きすぎるという問題もあります。

天の川銀河を含む近傍の宇宙では、ある銀河の中心ブラックホールの大きさは、それが属する銀河の星の総質量の約0.1%に近い値となっています。

このような具体的な数値に落ち着くということは、銀河と超大質量ブラックホールという2つの異なる天体が、何らかの形で共に進化していることを示す手がかりとなるかもしれません。

それに対しLRDの場合、そこに超大質量ブラックホールがあるとすれば、その質量は銀河全体の恒星質量の実に40%という、近傍宇宙では考えられないほど巨大なブラックホールが存在することになってしまいます。

○活発な星形成が行われている説

LRDの光を観測した際、若い星が放ったと見られる短波長の光のデータが得られており、これはここに若い星が非常に大量に形成されていることを示唆する根拠であると言えます。

しかし超大質量のブラックホールは、一般的に光を作り出す効率が恒星よりもはるかに高いため、LRDから観測される光の量を恒星だけで説明するには、それこそ膨大な数が必要になるという問題があります。

仮にどのLRDにも膨大な星形成が行われる高密度領域が存在するとすれば、現在の宇宙には予想よりも遥かに多くの星が形成されることになってしまうほどです。

具体的な密度として、太陽を中心に半径4.2光年の球体を置いたとすると、そこに他の恒星は「プロキシマ・ケンタウリ」しか存在しません。

しかし一方でLRDで同じ球体を置いたとすると、球内に平均100万個以上の星が含まれることになり、まさに桁違いの密度の若い恒星が存在することになります。

また、活動的なブラックホールの形成と活発な星形成は関連する事象であり、LRDにはこれらの両方が存在する可能性も十分にあります。

LRDの正体に関する謎は未解明であり、深宇宙にはJWSTによって明らかになった多くの謎が残っています。

今後の深宇宙探査に期待がかかっています。

https://arxiv.org/pdf/2406.10341
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad2345
https://www.universetoday.com/166163/little-red-dots-in-webb-photos-turned-out-to-be-quasars/
https://www.scientificamerican.com/article/jwsts-little-red-dots-offer-astronomers-the-universes-weirdest-puzzle/
https://www.wired.com/story/the-jwst-has-spotted-giant-black-holes-all-over-the-early-universe/
サムネイルCredit: Jorryt Matthee. Data from the EIGER / FRESCO surveys

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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