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週末の冬型の気圧配置と週明けの南岸低気圧、その後今冬一番の寒気南下

饒村曜気象予報士
予想天気図(1月18日9時の予想)

季節外れの暖かさのあとの寒気南下

 令和5年(2023年)は、年始から寒気が周期的に南下していましたが、1月13日(金)には北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上し、4月並みの気温という季節外れの暖かさになりました。

 このため、北海道の平野部では雪ではなく雨が降りました。

 最高気温が氷点下という真冬日を観測した地点数は0となり、最低気温が氷点下という冬日を観測した地点数も急減しています(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月17日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和4年11月1日~令和5年1月17日)

 それどころか、鹿児島県名瀬市で26.4度を観測するなど、最高気温が25度以上という夏日を観測したかのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)ありました。

 しかし、この季節外れの暖かさは長続きせず、すぐに西高東低の気圧配置となって寒気が南下しました。

 1月14日(土)と15日(日)には、大学教育で必要とされる「思考力・判断力・表現力」等を多面的・総合的に評価する試験、つまり、大学入学共通テストが実施されましたが、共通テスト初日の14日は、全国的に気温が平年より高くなり、2日目の15日は逆に低くなるという大きな気温変化の日でした。

 そして雨が降っている試験会場も多く、受験生は体調管理などに苦労した共通テストとなりました。

上空約1500メートルの気温

 気象予報士の間では、寒さの目安として、上空約1500メートルの気温が使われます。

 上空約1500メートルで氷点下6度は、平均的にみると地上付近の気温が3度位となりますので、上空約1500メートルで氷点下6度という温度は、地上での雪と雨の境目の温度ということになります。

 大学入学共通テスト後に南下してきた上空約1500メートルで氷点下6度以下の寒気は、1月17日(火)朝には関東北部から近畿北部に達しています(図2)。

図2 上空約1500メートルの気温分布予報(1月17日朝)
図2 上空約1500メートルの気温分布予報(1月17日朝)

 その後、寒気が北へ後退し、暦の上で一番寒いとされる大寒の日、20日(金)の朝には、上空約1500メートルで氷点下6度線は津軽海峡まで北上する見込みです。

 しかし、20日午後から西高東低の冬型の気圧配置となって強い寒気が南下しはじめ、21日(土)には、北海道と本州・四国の上空約1500メートルでは氷点下6度以下となっています(図3)。

図3 上空約1500メートルの気温分布予報(1月21日朝)
図3 上空約1500メートルの気温分布予報(1月21日朝)

 その後、23日(月)には上空約1500メートルで氷点下6度線は東北北部まで北上しますが、この一時的な西高東低の冬型の気圧配置が弱まるタイミングで、本州の南岸を低気圧が通過する見込みです。

南岸低気圧

 太平洋側の地方でまとまった雪となるのは、本州南岸を低気圧が通過する時ですが、大雪となるのは、低気圧が八丈島付近を通過する時です。

 八丈島より北を通過すると、南から暖気が入って雨として降ることが多く、八丈島より南を通過すると低気圧本体から離れますので、雪の量が少ないか降らなくなるからです。

 1月23日の南岸低気圧は、今の所、八丈島の北を通過する見込みですが、まだ先のことであり予報誤差が非常に大きいので、最新の予報で確認してください(図4)。

図4 専門家向け予想天気図(陰影は前12時間降水域)
図4 専門家向け予想天気図(陰影は前12時間降水域)

 気象庁が発表している週間天気予報によると、23日はほぼ全国的に雪が降る(雪ダルマの記号が入る)予報となっています(図5)。

図5 ほぼ全国的に雪が降る予報となった1月23日(月)の天気予報
図5 ほぼ全国的に雪が降る予報となった1月23日(月)の天気予報

 最高気温は東京、名古屋、福岡でも8度となるなど、日本中が凍える寒さになる予報です。

今冬一番の寒気の南下

 南岸低気圧は、日本の東海上で大きく発達する見込みですので、1月25日(水)には、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、これまでより強い寒気が南下してくる予想です(図6)。

図6 上空約1500メートルの気温分布予報(1月25日朝)
図6 上空約1500メートルの気温分布予報(1月25日朝)

 先月のクリスマスの直前に南下してきた寒気を上回る、今冬一番の寒気になる可能性が高く、その時以上に大雪や暴風雪に対する警戒が必要です。

 上空約1500メートルで氷点下18度の非常に強い寒気が入っている場所は大雪に警戒する目安ですので、北日本と北陸で大雪に警戒が必要ということになります。

 加えて、上空約1500メートルで氷点下6度の寒気は、伊豆諸島から四国・九州まで南下していますので、太平洋沿岸部で降水があった場合は、雪、それも気温が高い時(0度前後)の雪として降る可能性があります。

 同じ降雪量でも、気温が低い時のサラサラした雪より、気温が高い時のベタベタした雪のほうが雪かき等を行うのが大変ですし、融けた雪が凍ってアイスバーンになることで滑りやすくなり、転倒事故や交通事故が急増します。

 また、気温が0度に近いときの雪は、樹木や電線に付着して倒壊や切断を起こし易くなります。

 雪が降るときは、降雪量の予報に注目が集まりますが、気温の情報も合わせて考える必要があります。

 雪は、比較的温かいときに降る雪のほうが危険なのです。

タイトル画像の出典:気象庁ホームページ。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図3、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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