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あれほど注目されたメガネ型ウエアラブルは忘却の彼方に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 ウエアラブル機器と言えばかつて、消費者向けエレクトロニクス分野で、スマートフォンの次にブームが来る製品カテゴリーだと期待されていた。

 しかし、ここ最近の市場動向を見ると、ウエアラブルが本格的に普及するまで、しばらく時間がかかりそうだ。

市場全体の95%がスマートウオッチとリストバンド型

 米国の市場調査会社IDCのレポートによると、今年の全世界におけるウエアラブル機器の出荷台数は1億2260万台で、昨年の1億1540万台から6.2%の増加にとどまる見通しだ。

 製品カテゴリー別の出荷台数比率は、「Apple Watch」や米グーグルのOS「Wear OS」搭載機に代表される「スマートウオッチ」が59.1%を占める。

 また同社が「ベーシック・ウエアラブル」と呼ぶ、より安価で機能が少ないリストバンド型機器は、36.0%を占めるという。

 つまり、これら腕に装着するタイプが、市場全体の95%になるとIDCは見ている。この比率は今後若干低下するものの、依然この市場で、大半を占めていくと同社は指摘している。

メガネ型の比率は0.2%以下

 ウエアラブル機器のカテゴリーには、シャツや帽子などに付ける「衣服型」、ヘッドフォン/イヤホンなどの「イヤウエア型」、メガネ型機器などの「アイウエア型」、クリップやストラップなどで体の一部に装着する「モジュラー型」などもある。

 ただ、これらの今年における出荷台数比率は、いずれも3%以下。かつて、グーグルが開発して話題になったメガネ型は、「その他」のカテゴリーに分類され、その比率は0.2%にも満たない。

 メガネ型は産業分野での普及が期待されており、グーグルも対象市場を法人に切り替えて開発を続けている。

 しかしIDCは、それほど成長性があるとは見ていない。この話題を取り上げているドイツの統計会社スタティスタも、「メガネ型ウエアラブルは、すっかり世間から忘れ去られたようだ」と報告している(図1)。

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「イヤウエア型が高い成長で推移」

 一方、今後、最も成長が期待できるのはイヤウエア型だとIDCは指摘する。

 同社の定義では、耳に装着するタイプの機器の中で、オーディオ機能のほかに、もう1つの別の機能を備えるものが、イヤウエア型ウエアラブル機器。

 この分野では、フィットネスやコーチングの機能、あるいは即時翻訳機能を備えるものがすでに登場している。

 今後は、AI(人工知能)アシスタント搭載製品の次世代機が登場する可能性もあり、将来が大いに期待できるという。

 IDCが予測する、今後4年間におけるスマートウオッチの年平均出荷台数伸び率は13.7%。これに対しイヤウエア型は、同じ期間に56.3%の伸びで推移すると分析している。

  • (このコラムは「JBpress」2018年10月2日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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