刺激的な「広告コピーライティング」の落とし穴
モノが売れないとき、あるいは、もっと売りたいとき、当然のことながら企業は対策を考えます。その際、多くの人が真っ先に目を向けるのが「言葉」の改善です。言葉の改善――。その象徴的な例が「広告やチラシのコピー」あるいは「販売や営業のセールストーク」です。
その姿勢に問題はありません。言葉の選択によって売上が大きく変化した事例は、たくさんあります。ただ「言葉」を過大評価せず、依存しないことが大切です。広告コピーライティングなどの「言語データ」に頼っていると、次のような問題が出てくるからです。
● 最初は成果が出るが、次第に成果(コンバージョン率)が落ちてくる。
● 成果が落ちると、「煽り」表現をするようになる。
●「煽り」が増えると、お客様が離れていく。
チラシやネット広告に頼っても結果は出ます。しかし、それは一時的なもの。マス広告を使って一般消費財を宣伝するならともかく、限定された市場の中でプロモーションをするのであれば、2回目、3回目、4回目……と続けていくと、次第にコンバージョン率が落ちていきます。
そのため、「究極!」「激安!」「完全無料!」「世界で最高の一品!」といった煽動表現を多用し、コンバージョン率の低下を食い止めようとします。こういった刺激的なコピーライティングを「煽り」と呼びます。まさに誇張表現と呼ばれるもの。「10」の価値のものが「15」に、「30」の価値のものが「50」に……というように、本来の価値よりも大げさに膨らませた表現、ということです。
「煽り」を強くすることで成果を保つことができるかもしれませんが、別の問題が生じてきます。「刺激馴化」と呼ばれる心理現象です。辛い物を食べ続ければ、あまり辛いと受け止めなくなります。これと同じこと。刺激を受け続ければ、次第に慣れて、刺激を刺激として認知されなくなります。
刺激的なキャッチコピーは確かに効き目があります。しかし効き目のある相手は一定数しか存在せず、その方々への訴求が一巡してしまえば、効果はがくんと落ちていきます。メルマガやブログも、コンテンツが商品の紹介、売込みばかりなら、読者は離れていくことでしょう。
「言語データ」で相手を引き寄せようとすると、商材に「言語データ」の魅力を求められます。それは、価格であり、品質であり、スペックなどです。結局、商材の実力に頼ってしまうことになります。言葉に頼っている限り、商材の実力以上には売れないのです。商材の実力以上の言葉を使おうとすると、「誇大広告」となってしまいます。
売れなくなると商材の実力不足、キャッチコピーの問題だ、と責任を転嫁してしまうと、ますます売れるものも売れなくなっていきます。売っている側の姿勢がお客様に伝わるからです。正直なところ、「キャッチコピー」や「セールストーク」といった「言語データ」は、誰でも真似できるものです。コピーしようと思われたら、すぐにコピーされてしまいます。しかし、非言語データである「人間性」や「表情」「姿勢」をコピーすることはなかなかできません。
キャッチコピー等に頼っているとどうしても、営業や販売員がそれらの「言語データ」に頼り、リアルな関わりをおろそかにしてしまいがちです。人を「その気」にさせるのは、やはり「人」なのです。人間が作り出す空気によってお客様を「感化」し、動かす努力を軽視してはいけないですね。