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大雪の週末は、流雪溝や側溝のつまりによる洪水に悩まされる雪国の生活

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
側溝が詰まり気味で冠水が始まった道路。車両の近くに消雪パイプの穴が(筆者撮影)

 大雪のあった週末は流雪溝や側溝のつまりによる洪水に悩まされる雪国。晴れたり寒さが緩んだりすると、床下浸水の被害がでることも。日頃道路冠水には慣れている分、気づいたら大洪水の憂き目に遭うのも雪国の宿命。

この土日は要注意

 雪国新潟県では、一昨日からまとまった雪が降りました。長岡市にある筆者の職場周辺では新たに30 cm以上の降雪がありました。職場の駐車場の除雪が間に合わず、駐車できる車の数がだいぶ少なくなっています。

 この週末、特に土曜日の天気予報は2月18日金曜日午前10時現在で曇一時雪。気温は新潟、長岡、高田で最高気温が7度、佐渡の相川で同8度の予想。つまり、この1週間の日々の気温との比較では、だいぶ寒さが緩むようです。

 したがってこの週末は、次のような流れが予測できます。

1.大雪で屋根には雪がたくさん → 寒くないし、おろそう

2.地面には雪の置き場がない → 一家総出で水に流そう

3.流すところは、流雪溝、用水路、側溝 → 雪をバンバン流さなければ

4.バンバン水を流すには → 消雪パイプの水を最大に出そう

 要するに、大勢が大量の雪を大量の水を使って流そうと集中すると、溝のつまりによる洪水が発生しやすくなるわけで、この土日はその要件を十分満たしそうです。

これまでの主な浸水被害

(妙高)市によると、建物被害は、流雪溝に雪が詰まり水があふれて床下浸水した住宅兼店舗が1軒、雪の重みで屋根の一部が崩落した店舗が1軒あった。市内では(2月)6日午後から幹線道路の拡幅除雪を行っており、雪で通行に大きな支障は出ていない。また雪が降り始めた4日以降、除雪中の事故などの人的被害の報告はない。上越タウンジャーナル 2022年2月6日 (日) 16:51(カッコ内は筆者の加筆)

1月7日からの記録的な大雪の影響により、弊社製造場は浸水の被害に遭いました。1月10日(日)のお昼頃に発生した被害の様子はテレビ、新聞での報道、SNS等で、ご存じの方も多いと思います。多方面の方々に多大なご心配をおかけしております。猪又酒造スタッフブログ 2021年1月14日

 いずれも浸水被害は日曜日に発生しています。しかも大雪の降った週のすぐの日曜日です。週末に自宅にいる人たちが一斉に除雪作業を行うのですから、当然と言えばその通りです。自治体によっては、流雪溝を使った排雪作業に関して次のようにお願いしている例があります。

 降雪時の朝晩や休日は、水路への投雪が集中します。町内や隣組単位で協力体制をつくり、時間帯を調整して投雪してください。米沢市

 実は大きな騒ぎにならないだけで、雪国では消雪パイプから出てきた水が排水口から十分に排水できずに道路が冠水することはよくあることです。

 雪の季節には長岡駅前周辺でさえも歩く時に長靴を履いていないと冠水のために横断歩道を足を濡らすことなく歩くことは困難です。列車で東京に出張する時には「長靴で東京にでらんないから、ロッカーに長靴を預けて革靴に履き替えて列車に乗った」という笑い話は、昔も今も存在します。

簡単な冠水実験

 昨日(2月17日)までに降り積もった雪に覆われた筆者の職場の構内。今朝は太陽が輝き比較的暖かい朝となりました。構内道路では消雪パイプから水があふれんばかりに路上にまかれていました。暖気で雪が融けると同時に消雪パイプからの水が加わり、冠水条件がそろいましたので、人の迷惑にならない程度に簡単に冠水実験をしてみました。

 実験場所は、カバー写真に示した場所です。左下に示すように道路の傍らではすでに冠水が始まっていました。路面の積雪はほぼ解消して、車両の付近にある消雪パイプの穴から水が噴き出している様子がわかります。

 その水は地下水をくみ上げて得られています。水温は15度前後で安定していて、雪を融かすのに十分高い水温です。

 すでに冠水が始まっている原因は、図1に示すように側溝の排水口に枯れ枝が溜まって口がだいぶふさがれているからです。長岡市内で道路の一部冠水が雪のシーズンに見られるのは、実はこのようにゴミが排水口をふさいでいることが多く、ゴミを取り除けば冠水はだいぶ緩和できます。

図1 枯れ枝に覆われた排水口。カバー写真の左端に当たる(筆者撮影)
図1 枯れ枝に覆われた排水口。カバー写真の左端に当たる(筆者撮影)

 図1に示した排水口に雪の塊を積んでみました。すぐに道路に水があふれ始めました。その様子を図2に示します。排水口をふさいでからおよそ30秒後の様子になります。

図2 中央より少し上にある排水口を雪の塊でふさいでみた。すぐに冠水が始まった(筆者撮影)
図2 中央より少し上にある排水口を雪の塊でふさいでみた。すぐに冠水が始まった(筆者撮影)

 あまり続けると洪水騒ぎになるので、この実験はすぐに終了しました。この冠水状態を解消するのは簡単で、雪の塊と枯れ枝を排水口から排除すればいいのです。その様子を図3に示します。

図3 実験終了後に排水口の雪の塊と枯れ枝を排除した様子(筆者撮影)
図3 実験終了後に排水口の雪の塊と枯れ枝を排除した様子(筆者撮影)

おわりに

 この週末は、今週大雪に見舞われた日本海側の各地で流雪溝などへの排雪作業が行われると思います。溝のつまりは雪の塊ばかりでなく、枯れ枝などのゴミが原因であることが十分考えられます。排水口の流れ具合いを常に気にかけて、周辺の洪水を起こすことなく除雪作業をすすめましょう。

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水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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