東京 猛暑一因に高層ビル群
気象関係者を驚かせた
この夏、東京の猛暑日(日最高気温35度以上の日)は11日に達し、2013年以来2年ぶりに10日を上回りました。2年ぶりといっても、東京の猛暑日は平均すると、一年間に数日程度ですから、この夏の突出ぶりがわかります。
そしてなにより、気象関係者を驚かせていることがあります。
50年にわたり、東京の気象観測は大手町にある気象庁構内で行われていました。それが昨年12月に北の丸公園に移転し、初めての夏を迎えたのです。ビルに囲まれた大手町と緑豊かな北の丸公園では、当然、環境が違います。その環境が与える影響をみるために、移転するまでの3年間、比較の調査が行われました。
その結果、夏日や真夏日の日数はほぼ同じでしたが、猛暑日は北の丸公園の方が少なくなる傾向がみられたのです。そのため、この夏は数字上、猛暑日は少なくなる可能性があると推測していました。ところが、あっさりと猛暑日連続記録を破り、ただただ驚きました。
そもそも、暑さの気象条件が重なったのでは?と思われるかもしれませんが、手近の気象資料を見る限り、過去の猛暑年ほどの特異さはみられず。
猛暑の原因を偏西風の蛇行や台風の影響などに求める解説が目立ちますが、ちょっと腑に落ちない感じです。
東京の猛暑日は平日に多い
気象条件以外に原因を求めるとすれば、巨大都市東京特有の要因でしょう。
東京の猛暑日を曜日別に調べたのが、左表です。
木曜日を筆頭に、火曜日、金曜日に多く、全体の約6割を占めます。一方で、月曜日、日曜日は少ないことがわかります。
平日に多く、週末に少ない傾向には経済活動の影響が見え隠れします。
高層ビル群が海風を遮る
また、過去の猛暑日をグラフでみると、東京の発展とともに増加していて、とくに1990年以降の伸びが大きい。
これまでにも、都市化にともなう「ヒートアイランド(熱の島)現象」が指摘されてきました。地面を覆うアスファルトやコンクリートビルが日中、熱を蓄え、夜間に放出することで、気温の低下を抑えます。
さらに、高層ビルは風の侵入を遮るため、熱がこもりやすくなる悪循環が生まれます。とくに、近年、湾岸開発が進み、高層マンション群が増えました。
この高層ビル群がまるで屏風のように立ちはだかり、海風の侵入を妨げているという指摘があります。東京都心は東京湾に隣接していながら、海風の恩恵を受けにくい特異な場所になっているのです。
以前、寺田寅彦の言葉を引用して、東京に夕風が消えたことを紹介しました。「天災は忘れた頃にやってくる」と物事の本質と長期的な見方をなにより大切にした寅彦が現代の東京をみたら、どう思うのでしょう。やみくもに経済発展を求めるがあまり、生活環境を無視した開発のつけが回ってきたんだと思います。
【参考資料】
東京の猛暑日日数:気象庁ホームページ
「東京」の観測地点の移転について:気象庁観測部,2014年11月14日
ヒートアイランド監視報告2014:気象庁,2015年7月31日