平均的に見ると高齢者は資産で見ても豊かになっている-統計から見る世代別貯蓄の実態-
昨日の記事では、消費面から見ると、高齢者が貧しいというイメージは過去のものであり、これからは若者こそが貧しくなるリスクが高い点を指摘しました。
1.高齢世代は過去四半世紀の間トレンドを上回る勢いで豊かになる一方、若者世代は2000年以降貧しくなる一方である
2.高齢者は押し並べて貧しいというイメージは過去のものであり、これからは貧しい若者が増加する可能性が高い
3.貧しい若者が今後も貧しいままであるとそもそも社会保障を維持するだけの体力は残らず、逆に生活保護需給予備軍となってしまう
高齢世代は豊かになり若者世代は貧しくなっている-家計消費から見る世代別消費の実態-
上の記事では触れませんでしたが、高齢者の消費がデフレ期間も堅調だったのはもちろんデフレ期においても特例措置で年金を削減しなかったからに他なりません。若者の消費抑制という犠牲の上に高齢者の消費の堅調さを維持してきた構図です。
今回は世代別の資産面(金融)における差異を見てみることとします。
(データ出典 総務省統計局『全国消費実態調査』)
この表からは、
- おおむね若いほど貯蓄額は低いものの引退するまで(60-64歳)は貯蓄は増加し(積み立て期間)、それ以降は減少する(取り崩し期間)
- 上記に関連して、バブル崩壊以降は高齢者の貯蓄取り崩しの動きが緩やかである(将来の不確実性が増し貯蓄を安心して取り崩せない)
- 同一の年齢階層を時系列で見ると、総じて見れば、1994年から1999年をピークに足元では減少しているものの、高齢世代ほど増加率が大きい(高齢者は平均以上に資産を蓄積してきた)
- 上記に関連して、例えば、バブル期(1989年)に25歳未満だった世代とバブル崩壊後(1994年)に25歳未満だった世代の貯蓄の動きを追ってみると、出発時点はほぼ同額であるにもかかわらず年を経るごと(最近になるほど)に後に生まれた世代のほうが前の世代の同じ年代のときの貯蓄額に比べて少なくなっている(若い世代ほど所得が伸び悩み貯蓄ができなくなっている)
点を指摘できる。
要するに、消費額で見ると、高齢者は豊かになり若者は貧しくなっていたが、資産で見ても、高齢者はより豊かになり、若者はより貧しくなっていることがデータから裏付けられた。
繰り返しになりますが、前回の記事とあわせて、フロー・ストック両面で見て、貧しい高齢者のイメージは過去のものであると言える。
こうした点に鑑みると、現在の社会保障制度等は(昔のイメージでいまも貧しいと思われている)高齢者をいかに社会(主に若い世代)で支えるかという問題意識から構築されていますが、過去とは違い現在では、高齢者は豊かになり逆に若い世代が貧しくなりつつあるのですから、すべての世代の生活を安定させるという視点からは、現在の財政支出(社会保障も含め)をどのように再構築するのが(水準からも分野からも)もっとも適切なのか、根本的な議論が必要であるように思います。
もっとも高齢者が貧しいというイメージは過去のものだとお前は言うけど、生活保護受給者に占める高齢者の割合は構造的に増加しているという事実もあるじゃないかという指摘も当然あり得るでしょう。
その点については、稿を改めて、世代内格差が著しい高齢者間での消費・貯蓄の違いについて検証する機会を持ちたいと思います。
※本記事でのデータは総務省統計局『全国消費実態調査』に基づきましたので、2009年までしか利用できません。そこで総務省統計局『家計調査』のデータで貯蓄額の世代別の動きを2014年まで見てみると、実は、60歳以上で貯蓄が上昇しつつある様子も見られます。特に足元では株価の上昇が効いているようです。
(データ出典)総務省統計局『家計調査(貯蓄・負債編)』