なぜバルサはD・オルモを獲得したのか?懸念はニコの確保…必要な中盤とウィングの人材。
カンテラーノの復帰が、決まった。
バルセロナはダニ・オルモの獲得を発表している。移籍金固定額5500万ユーロ(約87億円)+ボーナス700万ユーロ(約11億円)でライプツィヒと合意して、選手とは2030年夏までの契約を結んでいる。
「早く始めたい。そういうモチベーションに満ちている。(移籍が決まるまでの)数日間は、緊張感が高く、とても早く過ぎた。ライプツィヒには、すごく感謝している。新たな時代に向けて、全力で向かいたい」とはダニ・オルモの言葉だ。
「バルサは僕の獲得をプッシュしてくれた。それは評価すべきだった。僕を欲してくれたこと、ここにいられることに誇りを感じる。僕たちはバルサだ。すべてのタイトルを勝ち取るために戦う」
■バルセロナのカンテラーノ
ダニ・オルモはラ・マシア(バルセロナの育成寮)出身の選手だ。ユース世代までバルセロナのカンテラで過ごし、2014年夏に自身がルーツを持つクロアチアのディナモ・ザグレブに移籍した。
D・ザグレブで頭角を現し始めたダニ・オルモに、ドイツの強豪が目を付ける。2020年1月の移籍市場で、ライプツィヒが移籍金3000万ユーロ(約48億円)を準備して獲得に動いた。その後、ライプツィヒでは148試合に出場して29得点34アシストを記録している。
ダニ・オルモは「出戻り組」である。セスク・ファブレガス、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ…。かつて、多くの選手が様々な理由で一度はバルセロナから離れ、そして戻ってきた。ダニ・オルモも、その一人になる。
バルセロナは育成が強い。EURO2024で、16歳だったラミン・ヤマルが躍動していたのは記憶に新しい。この度のパリ五輪においても、アルナウ・テニナス、フアン・ミランダ、セルヒオ・ゴメス、アドリアン・ベルナベ、ディエゴ・ロペス、アベル・ルイス、エリック・ガルシア、パウ・クバルシ、フェルミン・ロペスがバルセロナのカンテラーノとして金メダル獲得に貢献した。
また、この夏のプレシーズンでは、パウ・ビクトール、マルク・カサード、マルク・ベルナルが猛アピールしている。
■新戦力のポジション
バルセロナは、ハンジ・フリック監督の就任後、【4−2−3−1】を使用している。
ダニ・オルモに求められるのは、トップ下でのプレーだろう。EURO2024のスペイン代表でも、そのポジションで輝きを放っていた。
だが現在のバルセロナは、中盤で“オーバーブッキング”が起こっている。イルカイ・ギュンドアン、ペドリ・ゴンサレス、パブロ・トーレ、フェルミン、そしてダニ・オルモ。5選手が、1個のポジションを争うことになる。
奇しくも、先のEUROで、ペドリはダニ・オルモとトップ下の定位置を争っていた。ギュンドアンは昨季、アンドレアス・クリステンセンのボランチ起用により、高い位置でプレーするようになり、真価を発揮。フェルミンはパリ五輪で6ゴールと爆発し、得点力を見せ付けた。P・トーレは、前述のパウ、カサード、ベルナルと同様にプレシーズンで好パフォーマンスを披露した。
ウィングやインテリオールでもプレー可能なダニ・オルモだが、やはり適性ポジションはトップ下だ。ロベルト・レヴァンドフスキを頂点に据えたシステムが、どのように機能するか。注目である。
■ニコ・ウィリアムス獲得の行方
一方、バルセロナは、ニコ・ウィリアムスを諦めていない。
ニコの契約解除金は5800万ユーロ(約98億円)に設定されている。ダニ・オルモの獲得に5500万ユーロを費やしたクラブに、資金が残されているかどうか…。難しいところだ。
アトレティック・クルブは、プレシーズンのラストマッチ、シャルケ戦にニコを帯同させなかった。そこで、移籍の憶測が加速したが、アトレティックとしてはEUROでフル稼働したニコを休ませたかったのだろう。
ダニ・オルモは今夏のバルセロナの補強第一号になった。
新シーズンは、ガビやアレッハンドロ・バルデといった、昨季負傷で長期離脱した選手も戻ってくる。それを“補強”と言うこともできるだろう。
移籍市場は閉鎖するまで分からない。長い夏は、まだ残されている。