「トランプ当選」で「金正恩の祝電」はあるのか?
米大統領選挙はトランプ前大統領の圧勝に終わった。
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はウクライナのゼレンスキー大統領同様にいち早く、祝電を送っていたが、二人とも内心穏やかではないであろう。二人ともハリス副大統領に期待を寄せていたからだ。
米大統領選挙結果からすれば、二人は明らかに賭けに負けた「負け組」である。逆に「トランプ当選」を密かに願っていたふしがあるプーチン大統領と金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「勝ち組」と言っても過言ではない。
「勝ち組」のはずなのにプーチン大統領も金総書記もまだ祝電を送っていない。とりわけ、注目されるのは大喜びしているはずの金総書記の反応である。
北朝鮮は7日午前10時現在、米大統領選挙結果について全く触れていない。
歴代3回の米大統領選に関する北朝鮮の反応をみると、オバマ大統領当選時(2012年)は4日後に労働新聞を通じて論評を加えず、客観報道に徹し、前々回の「トランプ当選」(2016年)の時は10日後に朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)が祝電を送ったことを非難する個人の署名入り論評を党機関紙「労働新聞」に載せ、伝えていた。
そして、前回の大統領選挙(2020年)は2カ月間沈黙し、バイデン政権が発足した翌年(2021年)1月23日になって初めて対外宣伝媒体を通じて伝えていた。
この異例とも言うべき長きにわたる沈黙と言うか、無視はバイデン大統領が大統領選挙遊説で「我々はプーチンや金正恩のような独裁者や暴君を抱擁する国民ではない」と、金総書記に「独裁者」や「暴君」のレッテルを張っていたことへの不快感の表れと言えなくもなかった。
トランプ次期大統領は大統領選挙期間中、金総書記を「ヒトラーのような独裁者」と扱き下ろしていたハリス大統領候補とは異なり金総書記への批判は一切口にせず、逆に「核兵器や他の多くのモノを持っている者と関係を結ぶのは悪いことではなく、良いことだ」「バイデンが不正選挙をせず、私が再選を果たしていたならば米朝合意はとっくに成立していたであろう」「私はホワイハウスに戻れば、金正恩とまたうまくやる」と再三にわたってエールを送っていた。
トランプ大統領1期時に二人の間に数十通の親書交換があったのは周知の事実である。
金総書記からはトランプ氏が2020年10月に新型コロナウイルスに感染した時に「必ず打ち勝つと信じている」との見舞いの電報を送ったのが公式的には最後となったが、その数か月前には金総書記の代理人である妹の金与正(キム・ヨジョン)副部長が「トランプ大統領に対する金(国務)委員長同志の個人的な感情は疑う余地もなく強固で素晴らしい。委員長同志はトランプ大統領の事業で良い成果があることを願っている」とのメッセージを発信していた。
一方、トランプ氏もまた、昨年6月に北朝鮮が世界保健機構(WHO)執行理事国に選出された時にはソーシャルメディア「トゥルースソーシャル」を通じて金総書記に祝賀メッセージを送っていた。
北朝鮮はトランプ氏について大統領選挙期間中の今年7月23日、「朝鮮中央通信」の論評の中で「トランプが大統領を務めた時、首脳間の個人的親交関係をもって国家間の関係にも反映しようとしたのは事実であるが、実質的な肯定的変化はなかった。公は公で、私は私で、国家の対外政策とコイン的な感情は別である」と指摘していた。
いくら対話、交渉を呼び掛けても「行動が供わなければならない」として、トランプ氏に対して「米朝対決史の得と実をよく考え、今後我々への対応で正しい選択した方が良い」と、北朝鮮への抜本的な政策変更を求めていた。
仮に今も2人が「赤い糸」で結ばれているならば、金総書記本人でなくても妹から何らかの反応があるはずだ。
反応がなければ、またその反応が前向きのものでなければ、北朝鮮が当分の間、核実験やミサイル発射を続けることのシグナルとみることもできる。