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火星への片道切符「マーズワン計画」あなたは火星へ行きたいですか?

火星滞在イメージ図©Mars One

誰もが人生で一度は火星へ行ってみたいと思うのではないでしょうか。それでは、もし火星旅行が実現できたとしても、片道切符で地球へは帰ってこれないとしたら、あなたは火星へ行きたいでしょうか?

本記事では、実在した火星への片道切符計画をご紹介します。

■火星に人類を移住させる「マーズワン計画」

マーズワンは、2025年までに火星に人類初の永住地を作ることを目的にするオランダの民間組織で、2011年に設立されました。その計画は、片道飛行で火星に行って、定住しようというものです。

具体的な計画は次の通りです。まず、2025年に初めの4人を火星に移住させます。その後、2年ごとに4人ずつ増やしていきます。これで寂しくならずに火星でも楽しく過ごせそうですね。当初、アメリカを始め世界各国は冗談としか思っていませんでした。しかし、徐々に協力会社が増えてきたことから、どうも本気らしいと信憑性が高まっていきます。アドバイザーとして、ノーベル物理学賞受賞者のヘーラルト・トホーフト氏も加入しているほどです。

打ち上げロケットは、スペースXのファルコンヘビーを使用予定。宇宙船の供給社はタレス・アレーニア・スペース社が候補にあがっています。そして、無人火星探査機の開発実績のあるロッキード・マーチン社とも提携しているという情報もありました。

■議論が巻き起こる「火星片道切符」

火星滞在イメージ図©Mars One
火星滞在イメージ図©Mars One

そして最大の問題は、やはり片道切符ということです。しかし、現代の技術で、宇宙飛行士を乗せて火星と地球を往復するのは、莫大な燃料を火星まで持っていかなければならず極めて難しいのが実情です。それに対し補給物資を火星へ輸送するだけなら、放射線防御壁や人類移住空間などの施設が必要ではないため、安いコストで抑えることができます。

宗教上の理由や、非人道的だという批判もあります。アラブ首長国連邦は、ムスリムが火星へ旅行したり移住することを禁ずる宗教見解を発表しています。理由は、死ぬ確率が高い火星への旅行が、イスラム教が禁じる自殺行為に等しいと判断したためです。

やはり、いざ自分が火星への片道切符を手にしたとしたら、もう二度と家族と会うことはできないので悩みますね。

■遂に開始された火星行きチケット争奪戦

そして2013年、遂にマーズワン計画の選考が始まりました。世界中からなんと20万人もの希望者が応募をします。2013年12月には1058人に絞られました。その中には日本人16人が含まれ、59歳の男性会社社長や30代の女性医学博士などが選考に残っていたそうです。そして2015年、最初の移住候補者を男女各50人の100人に絞ったと発表がありました。その中にはメキシコ在住の日本人女性シェフも含まれています。彼らはマーズ100と呼ばれており、テラフォーマーズのマーズランキングそのものですね。

しかし、ここから夢のようなマーズワン計画に不穏な空気が流れ始めます。マーズ100のアイルランド ダブリン大学のジョセフ・ローチ博士が詐欺告発を行ったのです。ローチ博士はマーズ100に選ばれた後も、まだ一度もマーズワンの関係者と顔を合わせていないとのこと。

そして、マーズワンでの「ランキング」はポイントに基いています。応募のプロセスで合格とされた人は、「マーズワン・コミュニティ」の会員になり、選考の段階が上がるごとにポイントが与えられます。

しかし、このポイントを増やす唯一の方法は、マーズワンから何か商品を買うか、現金を寄付することだそうです。金儲けの匂いがぷんぷんしてきました。さらには、このポイントは選考の基準になるわけではありません。ただ単にメディアに「マーズワンの有力候補トップ10」のように取り上げられるのみで、とにかく有名になりたい候補者にとっては大きなチャンスということです。しかし、インタビューやコメントの提供で得た報酬の75%はマーズワンに寄付するよう要求されているとのこと。一体、火星に移住したいのか、有名になりたいのか、どっちかわからなくなってきましたね。

■少しづつ怪しくなってきた火星移住計画

Mars Oneイメージロゴ©Mars One
Mars Oneイメージロゴ©Mars One

怪しいと感じた報道メディアは、詐欺の疑いを確認するために会社が登録されている場所に実際にインタビューへ訪れました。しかし、なんと従業員は1人だけで、オフィスも自宅だったそうです。

更には、宇宙飛行士候補者には厳しい身体能力検査と医師の定期的なチェックがあるはずでしたが、100人の候補者は医者と一度話し、毎日運動するよう言われただけだったという噂もあります。

皆さんもご存知の通りそもそも今の技術力では火星に定住するのは非常に難しいチャレンジなのですが、マーズワンには充分な従業員も、さらには専門家すらいなかったようです。

ちなみに、このマーズワン計画にかかる費用は60億ドルと発表されており、この計算にも現実味がないと指摘されていました。NASAの試算では、地球への帰還が前提とされた有人火星飛行でも、4500億ドルはかかると見込んでいます。更に、仮に60億ドルを集められたとしても、この短期間にこの計画を成功させることは「ほとんど不可能」と考えられています。一方で、マーズワンはこの60億ドルの調達のため、プロジェクトをシリーズ物のリアリティショーとして放映することも考えていたようです。テレビ番組制作会社のEndemol社との契約金で必要となる予算の調達が可能とのことでした。

■お金が底を尽き破産!?マーズワン計画はどうなる!?

何とかして資金調達を試みていたマーズワンですが、遂に2019年、お金が底をつき、破産宣言となってしまいました。しかし、マーズワン側は、破産はあくまで営利部門の話で、非営利団体「マーズワン財団」には影響は無いと主張しています。投資家と協議しながら今後も計画を進められるよう取り組んでおり、現時点ではこれ以上の事はお話しできないとのこと。

本当に火星片道旅行が実現するのか、これからも色んな意味で大注目ですね。

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