スタバやナイキ:相次ぐ米大企業の世界展開。東京やNYより「上海へ」の時代になってしまった
ついにスターバックス・リザーブ・ロースタリー(Starbucks Reserve Roastery)が日本に初上陸し、今朝中目黒にオープン。さっそく話題になっており、入店のための長蛇の列ができているようだ。
上海の知人にスタバのロースタリーが東京にもできたことを興奮気味に話したら、「こっちにはだいぶん前からあるよ」と、落ち着いた反応が返ってきた。そして、あることに気づく。
世界的企業やブランドの最先端は、まず上海を目指す時代になってしまった。(悲しきかな)
スタバにナイキ。共にミレニアル世代に大人気の、米国発2大企業だ。今回オープンしたロースタリーのような新形態の店舗の世界展開はここ約1年で盛んに進んでおり、いずれも立て続けに上海そしてニューヨークと出店している。
ここで2つ気になる点がある。
一つはナイキの新形態店がまだ東京に上陸していないこと。もう一つは米系企業にして「なぜニューヨーク店より上海店が先なのか?」ということだ。
焙煎所付きスタバの豪華版
Starbucks Reserve Roastery
スターバックス・リザーブ・ロースタリー(以下ロースタリー)のニューヨーク店がオープンしたのは昨年12月14日のこと。
ニューヨークの店舗は広く、2.5フロアにまたがり、焙煎機を店内2ヵ所に設けている。より質の高いコーヒーやドリンクを提供するだけではなく、職人が豆の焙煎をしている過程を直接見られたり、人との繋がりを深めたりできる体験の場。「コーヒーのワンダーランド」と呼ぶにふさわしい場所だ。
この新形態の店がオープンしたのは、スタバの本拠地シアトルで2014年のこと。以来、上海、ミラノに上陸しており、このニューヨークが世界4店舗目、そして今日オープンした東京店が5店舗目となった。その後は今年中にシカゴ店の完成も予定されている。
ミラノは同社創業時から、スタッフがカフェやエスプレッソバーの研究で視察に訪れていたゆかりの地。ニューヨークは世界を代表する大都市であるだけでなく、元CEOハワード・シュルツ氏の生まれ故郷でもある街ということで、これも納得。だが「なぜ上海が2番目?」という疑問が湧いてくる。
ロースタリー・ニューヨーク店のジェネラルマネージャー、ラウルさんに理由を聞くと、
「中国はスターバックスが急成長している国です。15時間に1店舗オープンしていて、さらなる大きなビジネスチャンスが潜在しています。現在上海には600店舗のスターバックスがあり、その店舗数は我々が出店する都市の中で最多です」
同社米国の広報によると、「ニューヨーク市内にあるスタバの店舗数は350店舗」。その数を単純比較しても、上海の店舗数の多さがわかる。
上海は、経済成長を遂げポテンシャルもある世界最先端の都市であり、リテール業界も進化している革新的な都市、そしてスタバが世界でもっとも急成長しているというのが、ロースタリーがシアトルの次の地として選んだ理由のようだ。
ナイキのイノベーション×旗艦店
Nike, House of Innovation
一方、米国発世界的企業のナイキも、テクノロジーを取り入れながら顧客にアクティブな体験の場を提供する新コンセプトの旗艦店「Nike NYC, House of Innovation 000」(ナイキNYC、ハウス・オブ・イノベーション000)を、ニューヨーク5番街に作った。
オープンは昨年11月15日だったが、実は001となる上海店が昨年10月にすでにオープンした後だった。(002となるパリ店も今後予定されている)
ニューヨークが000、上海が001と数字的にはニューヨークが先なのだが、開店日である実際の顧客へのお披露目は上海が1ヵ月も早い形となった。
同社グローバル・コーポレート・コミュニケーションズ・ディレクターのサンドラさんは、
「000はゼロより以前という意味。この新旗艦店の構想が浮かんだ際、リテールの次世代を考えると同時に、逆に20年以上前に遡る我々の原点、ニューヨークの『Niketown』を思わずにはいられなかった」
「000は過去から未来へ続く旗艦店のシンボルなのです。そしてニューヨーク店に続く上海店は001です」と、あくまでもニューヨーク店が上海店より先に存在することを強調した。
しかしオープン日が前後しているのは?
「そのタイムラインについては、私たち(スタッフ)は反対でした」とのこと。
おそらく工事や認可関連などのアンコントロールな諸事情で、上海のオープンが早まったかニューヨークのオープンが遅れたかして、自分たちの意思とは前後してしまったのだろう。
世界の最先端都市に大成長した上海
このように理由はさまざまだが、米系企業にもかかわらず、諸々の事情で上海が僅差で先、ニューヨークが後になってしまった。
世界企業がアジア進出を計画したとき、まず上海が候補地として選ばれるのは時代の潮流だ。
日本人としてやはり気になるのは、日本進出が一歩出遅れているということではないだろうか。しかし日本にはオリンピックという、国際舞台に東京をアピールする千載一遇の機会が待っている。これを契機に「アジアといえばTOKYO」という時代が、もう一度やって来てはくれないだろうか。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止