オートバイのあれこれ『マッスルカーみたいなバイク』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今宵は『マッスルカーみたいなバイク』をテーマにお話ししようと思います。
長い歴史の中で個性的なオートバイというのはいくつも登場してきましたが、今回紹介するオートバイも、唯一無二の存在感を放つ歴史的作品と言えるでしょう。
ヤマハ『VMAX』です。
私がわざわざ文字で表現しなくても、画像のみでその独特さをある程度はご理解いただけるかと思います。
一見、ハーレーダビッドソンのようなクルーザーモデルに見えなくもないですが、このVMAXのコンセプトは「ドラッガーマシン」。
主にアメリカで人気の高いドラッグレースに出てくるような車両をイメージして開発されています。
誕生の背景にあるのは、アメリカからの要望でした。
ダッジ『チャージャー』やフォード『マスタング』のような、マッスルカー要素を持つオートバイが求められたのです。
このリクエストを受けたヤマハは、アメリカへ乗り込み本場のドラッグレースやマッスルカーを研究。
アメリカでは“とにかくデカいエンジン&図太いトルクで路面を蹴っ飛ばして走るバイク(クルマ)”が好まれていることが分かったヤマハの開発陣は、当時ヤマハの中で最も大きなエンジンだった『ベンチャーロイヤル』用のV4エンジン(排気量1,198cc)をチューニングし、VMAX専用のV4パワーユニットを製作しました。
ベンチャーロイヤルでは90psだった馬力が145psまでスープアップされ、これによりVMAXはアメリカ人もビックリの加速性能を手に入れることとなります。
このエンジンパワーにひと役買ったのが『Vブースト』システムで、これはエンジン回転数が高くなった時に各気筒へ送る混合気を増やして一時的に出力向上を図るためのものでした。
ターボやスーパーチャージャーと同類の技術と言ってもいいかもしれませんね。
車体のほうもアメリカンバイク風のロー&ロングスタイルとし、さらにV4エンジンが強調されたデザインを採用。
いかにもエンジンパワーでカッ飛んでいきそうなルックスに仕上げられていました。
VMAXが発売されてからは、その独特のスタイルと主張の強いV4エンジン、そしてVブーストの加速に興味を抱いたバイクファンが国内外問わずとても多く、VMAXはたちまち人気車種となりました。
また、ヤマハ以外のメーカーからも似たコンセプトのオートバイはいくつか出てきたものの、VMAXの存在感が薄まることは一切無く、デビューから約40年が経とうとしている現在も一部の熱烈なファンによって厚く支持されています。