忘れられない阿佐ヶ谷名物!「うさぎや」さんの蜂蜜香るどら焼きの中にはたっぷりのほくほく粒餡と町の歴史
ここ一か月の間に、名残惜しくも閉店されてしまう和菓子屋さんのニュースが立て続けに舞い込み、なんだか気分も沈みがちな日が続いておりました。
その皮切りだったのが、東京都のどら焼きの中でもトップクラスの人気を誇る阿佐ヶ谷「うさぎや」さんの閉店。
東京には三つの「うさぎや」さんというお店がありまして、いずれも看板商品と言えるのがどら焼き。上野からはじまり、日本橋、そして阿佐ヶ谷とご親戚同士の方が経営なさっています。暖簾分けではなく、もともとは上野が一番初めに創業しそのお子さんそれぞれが独立なさったのが日本橋と阿佐ヶ谷。創業年はそれぞれ、
・上野 1913年(父)
・日本橋 1948年(息子)
・阿佐ヶ谷 1950年(娘)
となります。(関係性が伝わりましたでしょうか。)
かつては西荻窪で生まれ、1957年に現在の阿佐ヶ谷へと移転なさったうさぎやさん。串団子やうさぎ饅頭、最中、大福といった一般的な和菓子も揃うお店ですが、食べ比べなさる方も多い「どら焼き」をご紹介。
ずっしりとしたどら焼きながらも、非常にきめ細やかで繊細な皮肌を持ち合わせたどら焼きです。開封してまず飛び込んでくるのが、蜂蜜のこっくりとした華やかな香り。アカシア蜂蜜をたっぷりあわせることで、軽やかな食感は保ちつつも保湿性に富み、もちっとした弾力も感じられます。そうそう、この蜂蜜と生地感、そしてぴったりと閉じてややむぎゅっとした歯応えの皮にまずは惹かれたんですよね。
その中に閉じ込められたあんこまた独特、そして秀逸。とろりとした瑞々しさを湛えながら、小豆一粒一粒が形と本来の味わいをしっかりと保持しているのです。そのため、半分に割った瞬間、そして口に含んだ瞬間、小豆がころころと転がり落ちてくるようではありませんか。丁寧に炊かれているあんこというのがひしひしと伝わります。
最後にもう一度、というのは日常使いしていなかった自分にとってはエゴなのかと思うこともしばしば。遠いから、日常使いできるほどの距離ではないから…と、理由はあれどそれすらも言い訳のように思えてしまう日もあります。
けれども、美味しかったという記憶を少しでも記憶しておきたいと願う気持ちに嘘偽りはありません。どなたか一人だとしても私の文章を読んでいただき、お菓子とお店の記録を記憶の片隅にそっと閉まっておいていただけたらと思いながら、文章を綴っている日々です。
2024年5月20日でその歴史に一区切り。ありがとうございました。
<うさぎや>
東京都杉並区阿佐谷北1-3-7
(20日に閉店のため、電話番号等の掲載は控えさせていただきます。)