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なぜ500円の商品を買うのに送料600円でも安いのか?

横山信弘経営コラムニスト
ショッピングは楽しいが……(写真:アフロ)

送料に「高い」「低い」があるのか?

アマゾンや楽天で500円の商品を買うのに、送料が600円するのにもかかわらず購入する人がいます。しかしほとんどの人はネットで買うのではなくリアル店舗で500円を支払い、買うことでしょう。送料600円がもったいないからです。

また「5000円まで購入したら送料無料」と条件をつけるネットショップもあります。そういう場合、「5000円まで買ったら得だ」と考えて、いろいろな商品を物色し、5000円以上になるまでカートに入れて購入する方もいることでしょう。

これは「相対性の罠」と呼ばれる認知バイアスが原因で起こる現象です。このようなバイアスにかかっていると、500円の商品に送料600円なら、「商品よりも高い送料なんて払えない」と受け止めても、しょうがありません。

しかし1万円の商品だったらどうでしょうか。送料が600円しても、それぐらいはいいかと思えるかもしれません。10万円の商品であれば、送料600円なんて、ほとんど気にしない人もいることでしょう。

相対性の罠とは?

物事をいつも相対的に比較し、判断するクセがある人は、本質を見誤ってしまうことがあります。

「なぜ、最近入社したあの人のほうが、私より給料が多いのか」

「昨年9000万円の目標だったのに、今期は1億円の目標に上がった。意味がわからない」

「せっかくヨーロッパを旅行するんだから、イタリアだけでなく、フランスやスペインも観光したい」

バイアスをはずし、相対的価値よりも絶対的価値を見つめなければならないときもあります。

「モノ」を運ぶという行為そのものを思い浮かべてみます。倉庫での梱包作業、物流センターにおけるピッキング作業、トラックによる運送作業など、一連のプロセスを、です。送料600円は600円。運ぶ「モノ」の大きさや重さによって影響があるでしょうが、「モノ」の値段が500円だろうが、50万円であろうが、関係はありません。

したがって「商品が500円なのに送料が600円なんておかしい。高い」という反応は論理的に破綻しています。いっぽうで「商品が1万円で送料600円ならわかるけど」という考えもおかしいのです。繰り返しますが、送料は送料です。「モノ」の値段とは別で考える必要があります。

そう受け止めることで、正しい判断をしやすくなります。

「相対性の罠」にかからないために

「相対性の罠」にかかってしまう人は、レイヤーの異なるものを比較してしまうクセがあります。

他人の給料がいくらであるかは関係がありません。家族が安心して生きていくうえで必要な給料はいくらか、自己実現の欲求を満たすためにどれぐらいの収入があればいいのか。この答との比較で、自分の給料が高いのか低いのかを判断すべきです。

「せっかくだから」が口癖の人も同様のバイアスにかかっています。「わざわざ九州から東京ディズニーランドにまで来たのだから、全部のアトラクションを味わいたい」

……このように考える人も、目的を見失っています。「すべてのアトラクションを体験する」ことが目的であれば、九州から来たかどうかは関係がありません。そこにかけた労力(コスト)と比較すると、「できる限り多くの体験をしないと損だ」という考え方になってしまうことが原因です。

もし東京ディズニーリゾートの近所に住んでいたら「せっかくだから、全部のアトラクションを味わいたい」などと思う人は少ないことでしょう。

送料の話に戻します。

比較すべきは、購入する「モノ」が手元に届くまでのコストです。リアル店舗に足を運ぶ際にかかる「時間的コスト」「精神的コスト」そして実際の「経済的コスト」を合算して検証しましょう。

すぐ近くの店舗で売っているのであれば、迷うことはないでしょう。しかし、ネットで調べたということは、身近にはないものである可能性が高いはずです。500円の商品のためだけに、車や公共交通機関を使って移動する、そのための時間や労力(精神的コスト)と、送料600円をどのように比較するか、です。

あなどれないのが、「ついで買いリスク」です。

先述したとおり、「せっかくだから」が口癖の人は要注意。コストをかければかけた分だけ取り返したいというバイアスがかかるからです。ちょうど別の用事でそのお店に行くというのであればともかく、そうでなければ500円の商品だけ買って帰宅することは難しいでしょう。

結局のところ、それなりのコストを支払うはめになることが多いのです。

したがって、ウィンドウショッピングが目的ならともかく、商品を買うだけであるなら、たとえ500円の商品であろうが送料600円は「安い」と受け止めていいでしょう(あくまでも送料が高いか安いかの話ですが)。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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