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エンジェルスは球団売却の前に大谷翔平を放出するのか。放出すべきなのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平とアルトゥーロ・モレノ(右)May 10, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスのオーナー、アルトゥーロ・モレノは、球団の売却を検討していることを発表した。

 モレノがディズニーからエンジェルスを購入したのは、2003年4月だ。価格は1億8400万ドルだった(1億8350万ドルの説もあり)。今年3月、フォーブスは、エンジェルスの資産価値を22億ドルと見積もった。今回の売却価格はそれを上回り、25億ドル前後になると思われる。30億ドルに達する可能性もある。

 現在、球団を手放そうとしているのは、モレノだけではない。ワシントン・ナショナルズのオーナー、マーク・ラーナーもそうだ。

 ナショナルズは、トレード・デッドラインの8月2日に、ホアン・ソト(とジョシュ・ベル)をサンディエゴ・パドレスへ放出した。ただ、その前に延長契約を申し出て、ソトに断られている。最後に提示した契約は、15年4億4000万ドルだったようだ(「15年4億4000万ドルの申し出を拒否!? 総額は史上最高のトラウトを上回るが…」)。

 球団の売却を検討しているにもかかわらず、ナショナルズがソトと長期契約を交わそうとしたのは、「ソトがいない球団」よりも「ソトがいる球団」のほうが高く売れると判断したからだろう。ソトがFAになるのは2024年のオフなので、正確に言うと「2024年までソトがいる球団」と「2037年までソトがいる球団」だ。

 結局、「ソトがいる球団」にすることをあきらめ、トレードで放出したのは、さらなる金額の上積みをして、あまりにも契約が大きくなりすぎると、球団の売却に際してマイナス要素になりかねない、と考えたのではないだろうか。

 ナショナルズがソトにそうしたのと同じように、エンジェルスも、大谷翔平に延長契約を申し出るかもしれない。大谷と長期契約を交わせば、エンジェルスは「マイク・トラウトがいる球団」ではなく「トラウトと大谷がいる球団」として売りに出せる。

 けれども、トラウトと大谷がいながら、エンジェルスは勝つことができていない。ポストシーズン進出は、2014年が最後だ。2016年以降はどのシーズンも負け越し、今シーズンも大きな借金を抱えている。

 また、エンジェルスが延長契約を申し出ても、大谷が断る可能性は高そうだ。このまま、エンジェルスでプレーしても、ポストシーズン出場のシナリオは描きにくい。

 エンジェルスは、トラウトに加え、アンソニー・レンドーンとも長期の大型契約を交わしている。それぞれ、12年4億2650万ドル(2019~30年)と7年2億4500万ドル(2020~26年)だ。2023~26年の年俸は、各シーズンとも3545万ドルと3800万ドルなので、2人合わせて7345万ドル。そこに大谷の延長契約が加われば、計1億ドルを超え、3人だけでエンジェルスの年俸総額の半分前後を占める。大谷の来シーズンの年俸は、今オフに年俸調停かその前に1年契約となった場合も、2500万ドル前後、あるいはもっと高額かもしれない。

 これでは、大型補強は望めない。ラグジュアリー・タックスを気にせず、年俸総額を増やせば別だが、売却を検討している球団がそうするとは思えない。しかも、トラウトとレンドーンは、ここ2シーズンとも長期にわたって欠場している。2人とも、すでに30代だ。

 延長契約を交わさなかった場合、大谷は、来シーズン終了とともにFAとなる。エンジェルスは、今オフにトレードで大谷を放出するのが、妥当に思える。MLBパイプライン(MLB.com)が発表した最新のファーム・システム・ランキングで、エンジェルスは最下位とされている。トップ100にランクインしている選手は、ブランドン・マーシュと交換にフィラデルフィア・フィリーズから獲得した、ローガン・オホッピーだけだ。大谷の見返りに数名のプロスペクトを手に入れれば、「将来」に関するエンジェルスの価値を高め、球団の買い手にアピールすることができる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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