Yahoo!ニュース

今春は鹿児島より先に仙台でさくらが咲く?

饒村曜気象予報士
伊達政宗騎馬像(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

さくらの開花

 令和2年(2020年)のさくらの開花は、1月6日の沖縄県の那覇で始まりました。

 鹿児島県奄美大島の名瀬でも、1月23日に開花し、奄美・沖縄地方では1月中にさくらの季節に入っています。

 奄美・沖縄地方のさくらは、ヒカンザクラで、多くの地方を代表するさくらであるソメイヨシノとは種類が違います。

 奄美・沖縄地方以外で、最初にさくら(ソメイヨシノ)が咲いたのは東京で、3月14日でした。

 ウェザーマップの片山由紀子気象予報士によると、全国(沖縄・奄美を除く)で最初にさくらが開花した地点(現在も観測が行われている地点)は、統計がある昭和28年(1953年)以降では、高知の18回が最多です。

 次いで、熊本の8回、鹿児島、福岡の7回などとなっており、令和2年(2020年)のさくらの開花で6回となった東京は、長崎と並んで5位タイになりました。

 これは、1月下旬以降の高温の影響が非常に大きかったため、平年より大幅に早い開花となったとみられていますが、東京のトップは、近年になってからです。

 なお、東京のさくら開花の最早記録は平成25年(2013年)と平成14年(2002年)の3月16日ですので、これより2日早い開花でした。

 これらは、都市化の影響が考えられていますので、東京が徐々にランクアップすると考えられています。

  

鹿児島と仙台の差

 東京でさくらが開花した頃から、日本上空には寒気が南下して気温が低くなりましたので、後続がしばらくありませんでした。

 東京に次いで、さくらが開花したのは、3月18日の横浜と埼玉県・熊谷でした。

 今後も、各地からさくらの便りが届きますが、令和2年(2020年)のさくらの開花は、関東地方から始まって、次第に暖かい地方に移っています。

 史上初めて、鹿児島より仙台の方が先に開花する可能性もあります。

 東京のさくら開花日の予報をズバリ的中させたウェザーマップの「さくら開花予想2020(3月16日発表)」では、鹿児島の開花が3月27日であるのに対し、仙台の開花が3月25日、福島の開花が3月26日となっています。

 さくら開花予報は、多くの気象会社から発表されていますが、目的にあった最新のものをお使いください。

 ちなみに、ウェザーマップでは、毎週月曜日と木曜日に更新しています。

 全国的にさくらの開花が観測されている昭和28年(1953年)以降で、鹿児島より先に仙台でさくらの開花があったのは、これまで一回もありません。

 平成29年(2017年)に、鹿児島で4月5日、仙台で4月7日にさくらが開花して、その差が2日、平成14年(2002年)に、鹿児島で3月27日、仙台で3月29日にさくらが開花して、その差が2日というのが、開花日が一番近い例です。

 平均的には、鹿児島でさくらが開花した16日後が仙台でのさくらの開花です(図1)。

図1 仙台と鹿児島のさくら開花日の差
図1 仙台と鹿児島のさくら開花日の差

 つまり、史上初めて、鹿児島より仙台の方が先にさくらが開花する可能性があります。

 さくらは、一定の寒さに晒されると、その後の暖かさで開花を急ぐ性質があります。

 これを、休眠打破と言うのですが、西日本を中心とした記録的な暖冬により、西日本では休眠打破が起きていない可能性があります。

 このため、休眠打破があって開花が加速する仙台では、休眠打破がないために開花が加速しない鹿児島よりも早くさくらが咲くと考えられています。

仙台の16日先までの予報

 仙台の16日先までの天気予報をみると、晴れの日が多く続き、最高気温も仙台としては高い10度以上の日が続きます(図2)。

図2 仙台の16日先までの天気予報
図2 仙台の16日先までの天気予報

 さくらの開花を促すような気温が非常に高いというわけではありませんが、休眠打破によってさくらの花の芽がふくらんでいます(写真)。

写真 仙台のさくらの標本木の様子(3月18日、ウェザーマップ・平野貴久気象予報士撮影・提供)
写真 仙台のさくらの標本木の様子(3月18日、ウェザーマップ・平野貴久気象予報士撮影・提供)

 今後、鹿児島の最高気温は、仙台より5度以上高い日が続き、さくらの花の芽もふくらんできますが、なかなか仙台に追いつかないと予想されています(図3)。

図3 仙台と鹿児島の最高気温の予想
図3 仙台と鹿児島の最高気温の予想

 それだけ休眠打破の影響は大きいのです。

 さくらが美しく一斉に咲くのは、厳しい寒さを乗り越えたからですので、地球温暖化によって厳しい寒さがなくなると、一斉に咲くという「さくらが持っている雰囲気」は崩れてきます。

 

図1の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

タイトル画像の出典:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート。

本文中のさくらの写真の出典:ウェザーマップ・平野貴久気象予報士提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事