夏の天候予想 北冷西暑型で、雨量も多い
ポストエルニーニョ
冬の終わりに、半年先の夏の天候をどのように予測するのでしょう?
1か月を超える天候を予測する方法は、日々の天気予報とはまったく違います。時間が長いため、スケールの大きい現象、たとえば、海面水温や大陸の積雪といった海や陸の状態が大気の運動にどのような影響を与えるのかを考え、予測するのです。
その代表的なものがエルニーニョ/ラニーニャ現象です。
この夏はエルニーニョ現象が終息し、予測のカギを握る現象はエルニーニョ現象からインド洋に移ります。インド洋熱帯域はエルニーニョ現象が終わったあとも、夏まで海面水温が高くなることが知られています。
太平洋高気圧は日本の南で強く、北で弱い
では、インド洋熱帯域の状況が日本の夏の天候にどのように影響するのでしょう?
ここからの話はちょっと複雑です。
夏にインド洋熱帯域の海面水温が高いとき、フィリピン付近で雲の発生が少なくなります(対流活動が不活発)。
左の図(模式図)を見てみましょう。
フィリピン付近で雲の発生が少なくなると、そこから起こる風の流れも弱くなります。すると、夏の高気圧の張り出しに偏りが生じて、日本の南では強いけれど、北への張り出しが弱い状態になるのです。
これを専門的な言葉で「PJ(Pacific-Japan)パターン」といい、盛夏期の日本の天候に大きな影響を与えます。
豪雨頻発のおそれ
この夏の天候予想によると、盛夏期は北日本と東日本で平年に比べて晴れの日が少なく、逆に沖縄・奄美は平年よりも晴れやすい見込みです。
また、降水量は夏、梅雨ともに西日本から北日本にかけ、平年並みか、多くなる可能性があります。
本州付近が夏の高気圧の縁にあたるため、梅雨前線や湿った空気の影響を受けやすく、北から寒気が流れ込むと、局地的な豪雨が多発するおそれもあります。
夏の天候予想は確率予測になるため、どんな夏になるのかイメージしにくいのが欠点です。また、冬のこんな時期に、夏の予想をして意味があるのかと訝る人も多いでしょう。
夏の天候予想(暖候期予報)はこれからの天候を考えるひとつのガイドラインとなるものです。指標としての意味合いは大きいと思います。
【参考資料】
気象庁地球環境・海洋部:全般季節予報支援資料 暖候期予報,2016年 2月24日
石川一郎:エルニーニョ/ラニーニャ現象に代表される熱帯海洋変動とその影響(7)インド洋の年々変動,平成24年度季節予報研修テキスト 季節予報作業指針~基礎から実践まで~,気象庁,141-143.