京都の雛祭りには欠かせない「ひちぎり」薫り高いよもぎと三種類のあんこで楽しむ仙太郎さんのひっちぎり
もうすぐひな祭り。桃の花に桜の花、色鮮やかなひなあられに桜餅、そして見目麗しい上生菓子…端午の節句とはことなり、桃の節句といわれるように雛祭りにまつわる和菓子はいずれもどこか淡く、パステルカラーを取り入れたような印象が強いように思われます。桃の花や桜のピンク、菜の花のような黄色、新芽の黄緑、無垢な白…
地方によって雛祭りのしきたりは様々ですが、京都には欠かすことができない和菓子「引千切(ひちぎり)」というお菓子があるのですが、ご存知でしょうか?京都の和菓子屋さんにて修行なさった職人さんやご当主がいらっしゃるお店では、京都以外でも店頭にならんでいるというところがあるようですね。
平安時代の宮中行事から続くお菓子というだけあり諸説ありますが、公家の行事に用いられた「戴餅(いただきもち)」という蓬餅を杓子上にしたもののくぼみ部分にあんこを乗せたお菓子からきているのだとか。また、大勢の人に振舞うため形を整える暇もなく、引きちぎったような形になることからも名前の由来がきているのだとか。
現在は練り切り餡に蓬をあわせたものや緑色に着色したもの、こなし製、桃色や白のきんとんを乗せたものなどお店によって表現の方法は様々。今回は京都の老舗、「仙太郎」さんの「ひっちぎり」がその原型に近いもののひとつではないかと思うので紹介。
仙太郎さんのひっちぎりは全部で三種類。小豆粒餡、こし餡、そして白小豆のこし餡をそれぞれ楕円形に丸めてのせています。ちょこん、と乗った桜の花の塩漬けがあるだけで、心が浮足立つような気がします。
草餅は弾力というよりも滑らかな粘り気の印象が強く、舌の上ですーっと伸びていきます。そのため、その色味の濃さが物語るように大胆な程の蓬の清涼感が鼻腔をスッと駆け抜けていきます。それでも青臭く感じないのは、底面に塗された黒豆黄粉の香ばしさが一役買っているということもあるかもしれません。
白小豆こし餡
舌先から染みていく甘味も余韻も最もあっさりとした白小豆こし餡は草餅の芳香を底上げしてくれるようであり、小豆粒餡とこし餡はじんわりと染みてくる素朴で優しいあんこの甘味にほっと心和む味わい。無骨と申してしまえば失礼かもしれませんが、粒餡は小豆の旨味も加わり風味豊か。
これからすくすくと成長していく子供たちにとって蓬の風味はちょっとまだ早いのかもしれませんね。でもきっと、来年には「これがいいんだよ~」なんて大人びたことを口にしているかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<仙太郎・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都市下京区寺町通仏光寺上る中之町576
075-344-0700
8時~18時(時期によって変動あり)
定休日 元旦