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鰻重は安くなるのか?問われる鰻屋の経営センス

前屋毅フリージャーナリスト

活ウナギの相場が下落に転じているそうで、養殖に使う稚魚(シラスウナギ)の不足から高値が続いていたが、これで鰻重も安くなるのだろうか。

冬から春に漁がおこなわれる稚魚の取引価格が今年は、昨年に比べると4分の1くらいにまで下がってきている。これによって今後、養殖ウナギの価格は下がることが予想され、在庫が増えることを懸念した養殖業者が出荷を急いでいる。

供給が増えたため活ウナギの相場が下がり、すでに1~2割も下落しているという。稚魚の取引価格が4分の1になってきているのだから、まだまだ下がる可能性は強い。

そうなると、気になるのが鰻重の価格である。原価が下がってきているのだから、普通なら鰻重の小売価格も下がって当然だ。

しかし、簡単には下がらないだろう。いったん値上げしてしまうと、なかなか値下げできないのが個人商店の特徴だからだ。鰻屋とて例外ではないだろう。

稚魚不足が続いたとき、活ウナギの価格も高騰したことから、鰻屋は次々と値上げに踏み切った。稚魚の高騰が大きく報じられたため、値上げしやすかったという背景もある。

値上げによって、マーケットは縮小した。鰻は食べたいが高いカネは払えない人が増えて、客足が減ったからだ。いったん足が遠のけば、なかなか戻ってくるのはむずかしい。原価が下がったからと値下げしても、顧客が戻ってくるかどうか、鰻屋には不安があるだろう。いったん値下げすれば、再度、値上げするタイミングもむずかしくなる。

それよりは、値段は据え置いて、原価が安くなった分だけ利益を増やしたほうがいいと鰻屋が考えても無理はない。柔軟な価格対応をやりやすい量販店は、原価が下がれば大々的に値下げをしてくるだろうから、そこに顧客を奪われてしまいかねないので、そのうえ値下げして利益を減らすことへの不安もでてくるにちがいない。

とはいえ、原価が下がっているにもかかわらず鰻重の値段を据え置いたままでは、消費者の理解は得られない。据え置くのか、値下げに踏み切るのか、こらから鰻重のシーズンを迎えるにあたり、各鰻屋の経営センスが問われることになりそうだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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