早朝の須磨寺で「阿字観」を体験!YouTube法話でも注目の副住職に学ぶ「うまくいかない時の捉え方」
源平合戦・一の谷古戦場近くにある真言宗須磨寺派の本山、須磨寺(神戸市)で勤行を体験した後、商店街を散策するツアーが開かれています。勤行を一緒に行うのは、動画サイト「YouTube」でも法話を配信する副住職の小池陽人(ようにん)さん(36)。2023年8月中旬の早朝に体験してきました。
ツアーは阪神アイビートラベルが主催。阪神間を中心に観光振興に取り組む一般社団法人「都市文化観光研究機構」(神戸市)が企画しました。早朝に須磨寺の本堂で勤行や瞑想(めいそう)を体験し、小池さんの法話を聞きます。その後は奥の院を参拝し、須磨寺前商店街で自由行動をするという流れです。
午前6時50分、須磨寺の本堂前に集合しました。早朝と言えども日差しは強く、既に暑いです。受付を済ませて本堂の中へ入ると、厳かな雰囲気に包まれます。座布団に座って、気持ちを整えます。
しばらくすると、副住職の小池さんが現れました。小池さんは、仏教の教えをさまざまな人に広めようと、YouTubeで法話チャンネル「須磨寺小池陽人の随想録」を展開。これまでに400本以上の動画をアップしています。内容は法話が多いですが、商店街の散策や高野山参拝、本の解説などバラエティーに富んでいます。小池さんの話は分かりやすく、心にすっと入ってきます。
小池さんと一緒に、早速勤行をスタートです。まずは、全員で般若心経を唱えます。最初は恐る恐るですが、だんだんと大きな声で読めるように。
次は瞑想です。ツアーで取り組むのは「阿字観(あじかん)」。呼吸を整えながら、悪い感情やもやもやしたものを吐き出して無の状態になった後、大日如来を表す梵字(ぼんじ)「阿」という言葉を発して自分の中にある仏様の心を感じていきます。
「日常生活に没頭し、悪戦苦闘しながら生きていると自分が見えなくなってくる。だからたまには空っぽにする時間を持つことが大事」と小池さん。セミの鳴き声が響く中、ひたすら呼吸や「阿」という言葉に集中します。意識的に頭を空っぽにしていく作業は、なんだか気持ちがいいです。
「そこがいいんだよ」から元気を取り戻す
その後は小池さんの法話です。この日は、人生で起きる出来事の捉え方について話しました。須磨寺の檀家に、笑顔が素敵な女性がいました。大正時代生まれの女性は幼くして母親を亡くし、神戸大空襲で自宅が全焼。研究者として定年まで働き、その後は病気で寝たきりの夫を看病し続けました。しかし「私はほんまにラッキーやわ」というのが口癖だったそうです。小池さんは、そこに幸せの秘訣(ひけつ)を感じました。
「人生で起こるいろいろな出来事を、自分がどう受け取るかによって、全く違う人生になるんじゃないかと思う。私は幸せやわ、ラッキーやわというポジティブな言葉の力、笑顔でいる努力をしている人のところに幸せはやってくるのではないかということを(女性から)教わった」(小池さん)
小池さんは、失敗したり、自分のことが認められなかったりした時に、自分に「そこがいいんだよ」と声をかけます。「根拠がなくていいんです。ただ肯定してしまう。自分が落ち込んでいる時に否定的な言葉を浴びせるとどんどん落ち込んでしまう。目いっぱい自分に優しくしてあげると元気を取り戻して、笑顔で接することができるようになります」
瞑想をして法話を聞くと、心がすっきりしました。勤行の後、小池さんに話を聞きました。「(勤行体験は)お子さん連れなど普段お寺に来られない方にリーチできないかと考えました。仏教は、よき仲間と一緒に修行することの大切さも説いています。1人で座禅するのではなく、皆さんと座禅をすることに豊かさがあると感じています。お寺に興味・関心を持ってくれるきっかけになればいい」
ツアーは9月30日までの週末に行われる予定です。涼しくなってきた初秋の須磨寺で、日々のあくせくとした忙しさから解き放たれてみてはいかがでしょうか。
※ツアーの参加費は大人・子ども共通で1人税込4000円。須磨寺前商店街のお店で使える1000円分のクーポンなどの特典あり。9月16~18日は、勤行後に本堂でフルートのミニコンサートも開かれます。ツアーの詳細や予約は「Kobe Local Tours」の専用ページから。
(撮影=筆者)