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中高年女性の「体重が増えない」悩み 隠れた肺の病気に注意

倉原優呼吸器内科医
(写真:アフロ)

「太らないようにダイエットをしないと」と思う人がいる一方で、体重が増えなくて悩んでいる人もいます。たとえば、「気管支拡張症」という病気があります。患者さんにこの病名を伝えても、「初めて聞きました」という人がほとんどで、まだまだ認知度が低い現状ですが、近年患者数が増加しています。その割になかなか早期発見されにくいというジレンマがあります。

なぜか細くならない気管支

気管支というのは本来、洞窟のように、端にいくほど細くなっていきます。ところが、端まで太い状態が続いているのが「気管支拡張症」です。

気管支拡張症とは呼んで字のごとく、「気管支」が「拡張」している状態を指します(図1)。軽症の患者さんも多く、一体どこまでが健康でどこからが病的なのか明確な境界線はありません。

図1. 気管支拡張症について(イラストは、イラストAC、いらすとやより使用)
図1. 気管支拡張症について(イラストは、イラストAC、いらすとやより使用)

そもそも、なぜ気管支が拡張するのかはよく分かっていません。分かっているのは、患者さんの多くが中高年女性であるということです。

感染を繰り返す人の気管支は次第に拡張していくことが分かっているので、外敵である病原微生物に弱い人が、そもそも気管支拡張症になりやすい素地を持っているのかもしれません。

女性ホルモンとの関連も指摘されており、閉経するあたりから女性患者数が増えています。男性にも起こることがありますが、女性のほうが健康に対するリスクが大きいです(1)。

「体重が増えない」

気管支が拡張すると、咳、痰、息切れなどの慢性的な呼吸器症状が生じ、慢性的に疲弊していきます。

長い間気管支が拡張していると、さまざまな病原微生物が気管支に定着しやすくなります。感染によってエネルギーが消耗し、体重が減っていくことがあります。

毎日呼吸筋を酷使している肺は、呼吸運動だけで多くのカロリーを消費するので、入ってくるエネルギーを上回れば、必然的にやせていくのです。

そのため、気管支拡張症が進行すると「体重が増えない」という悩みを抱える方が多くなってきます。「私はもともと太りにくい体質だから・・・」とおっしゃる方も多く、注意が必要です。

気管支拡張症が見つかりにくい理由

日本全体が高齢化社会になりつつあるため、中高年以上の人口が増えていることが患者さんの増加につながっていると思われます。

一方、人間ドックなどで胸部CT検査を受ける人が増えており、これによって気管支拡張症が発見されているという側面もあります。

パシャッと1枚撮影する胸部単純X線検査では、女性の場合乳房の真後ろある気管支拡張症が見えにくいことがあります。体を輪切りにする胸部CT検査を使えば、肺の中の異常が確実にキャッチできます(図2)。

図2.胸部CT検査だと発見されやすい(患者様の同意を得て掲載)
図2.胸部CT検査だと発見されやすい(患者様の同意を得て掲載)

診断されていない気管支拡張症がとても多く、正確な患者数は不明ですが、現時点で国内に50万人はいるだろうと考えられています(2)。

早期発見が重要

広がってしまった気管支が元に戻ることはないのですが、感染が悪化しないよう診ていく必要があります。一部の抗菌薬を長期間飲むことで悪化を防げるというデータもあり、呼吸器症状に応じてこれらを使うこともあります。

気管支拡張症は、図1のような悪循環に入って体重が減っていかないよう病院でしっかりと診てもらう必要があります。

呼吸器症状があって、体重が増えないという方は、この病気のことを思い出して早めに医療機関を受診するようにしてください。

(参考)

(1) Morimoto K, et al. ERJ Open Res. 2023 Feb 20;9(1):00424-2022.

(2) Fukuoka T, et al. Respir Investig. 2017 Nov;55(6):376-379.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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